今大会、優勝候補の一角に挙げられている東海大相模(神奈川)は過去2回、春の選抜制覇を達成している。初めて優勝したのが2000年の第72回大会。エース・築川利希也(東海大‐ホンダ)を中心とした高い総合力を誇り、全国でも有数の戦力として大会前から評判が高かった。
ところが本番では大苦戦。初戦の今治西(愛媛)戦は5‐0でリードしていた7回表に一挙5点を奪われ同点に。最後は延長10回裏に相手投手の暴投で辛くも勝利すると続く東洋大姫路(兵庫)戦では3‐2とこれまた接戦となったのだ。
しかし、準々決勝でようやく投打がかみ合った。寺井健雄の2ランを筆頭に17安打9得点。投げては築川が3失点で試合を作り、9‐3で作新学院(栃木)に快勝。続く準決勝でも打線の勢いは止まらず、11安打11得点。11‐1と鳥羽(京都)を圧倒して、春通算3度目となる決勝戦へ。
決勝戦は智弁和歌山との対戦となった。この大会、4試合で40得点と猛打で勝ち上がってきた相手である。試合は7回を終わって2‐2とたがいに譲らぬ互角の展開となっていた。しかし迎えた8回裏。東海大相模は先頭打者の松崎毅史が中前打をバントで送り、1番・楢原匠が勝ち越しタイムリー。さらに相手エラーで1点を追加し、ついに智弁和歌山を突き放した。エースの築川は11安打を浴びながらも堅い守りに助けられ、2失点完投。4‐2で勝利し、ついに初優勝を飾ったのである。過去2度の決勝戦では高知に5‐10、帝京(東京)に2‐3と惜敗しているだけに、まさに“3度目の正直”での優勝。同時に20世紀最後の春の選抜王者に輝いたのであった。
この優勝から11年後。東海大相模は2度目の選抜制覇を果たす。前年夏の選手権での準優勝メンバーを多くそろえていて、優勝候補の一角に名をつらねていたが、その優勝の原動力となったのが破壊力ある打線である。初戦の関西(岡山)が9‐1、2回戦の大垣日大(岐阜)が13‐5、準々決勝の鹿児島実が2‐0、そして準決勝の履正社(大阪)が16‐2。準々決勝こそ相手投手のボークで決勝点を挙げる形で苦戦の展開だったが、ここまでの4試合で計60安打と猛打爆発だったのだ。
迎えた決勝戦でもエース・三好匠(現・東北楽天)擁する九州国際大付(福岡)相手に2本塁打を含む14安打を放ち、相手を圧倒。6‐1で快勝した。
なお、この大会で東海大相模が放ったヒットは5試合で実に74安打。これは1939年第16回大会で東邦商(現・東邦=愛知)が5試合でマークした73安打を72年ぶりに塗り替える大記録となり、現在でも大会通算最多安打となっている。果たして今大会で東海大相模の後輩たちは、先輩たちのこの記録にどこまで迫れるのか。
(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=