いま、アラフォー世代を中心に、「トリプルリスク」の危険性が叫ばれている。「かくれ肥満」を提唱し、メタボに警鐘を鳴らした医師の岡部正さんによると、「高血圧・高血糖・高血中脂質のうち、どれか1つでも該当すると他の2つも悪くなる可能性がある」そうだ。トリプルリスクとは、このように3つが連鎖する危険性のこと。アラフォー世代の中年諸氏には“恐怖”ともいえる岡部さんの衝撃的な発言だが、トリプルリスク対策には、食生活の改善が急務!という。いったいどういうことなのか、その全容をみていこう。
◆生活習慣病を招くアラフォー世代の生活スタイルとは?
30代後半から40歳を過ぎると、仕事ではより責任ある立場になって管理職としてハードワークの日々。上へ下へと気を配るから人間関係のストレスも増すばかりで、ついつい酒量も増えて暴飲暴食してしまいがち。プライベートでも、子どもの教育やパートナーとの関係性など悩みは尽きない。時間もないし、日々の疲れからすっかり運動不足で、健康とは程遠い生活に……。そんな毎日では健康リスクが増すばかりか、生活習慣病にだってなりかねないのは当たり前だ。
事実、厚生労働省のデータでは、生活習慣病の患者数は増加傾向にあるようだ。メタボリックシンドロームが提唱されてから約15年、メタボ健診の実施など、さまざまな施策がなされているのに、なぜこのような傾向にあるのだろうか。それは、「健診では見つからない“隠れ”リスク」の存在があるからというのが、岡部さんの主張だ。
◆健康診断&メタボの落とし穴! トリプルリスクは知らぬ間に忍び寄る!
健康診断やメタボ健診は、健康リスクの早期発見が目的だ。もちろん、リスクが見つかった場合は対処することになるが、問題はリスクが見つからない場合にある。というのも、多くの人に、「健診では見つからない“隠れ”リスクが潜んでいることの理解が足りない」(岡部さん)という、現実があるからだ。
健康診断では、前日にアルコールは摂取せず食事にも気を遣う。当日も水以外の飲食はしない。つまり、普段の生活の状態ではなく、ベストの状態での測定結果だ。これでは、健康リスクにかかわる食後高血糖や早朝高血圧などはわからない。健診結果が正常でも、実は仮面高血圧、隠れ高血糖、食後高脂血症の場合があるというのだ。
また、メタボに対する理解の低さも問題という。とかく、メタボは見た目の問題と誤解されがち。それは、メタボの基準に「腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上」があり、腹囲がオーバーしていなければ問題ないと思ってしまうから。実はメタボには腹囲の他に、「高血圧・高血糖・脂質異常の2つを満たす」という基準もある。ウエストが細いからメタボじゃない!というワケではないのだ。
こうした健診とメタボの落とし穴を知らずに生活を改善しないまま過ごしていると、隠れリスクはやがて表のリスクとなってトリプルリスクとなり、やがては生活習慣病となってしまうのだ。とくに暴飲暴食や運動不足を自覚している人は健診結果を判断材料にしているかもしれないが、悪い結果が出なくてもトリプルリスクが潜んでいる可能性があることは知っておきたい。
◆心筋梗塞のリスクが35.8倍に!? 「脳梗塞」「脳出血」などの重大疾患も!
厚生労働省の糖尿病実態調査(平成14年度)によると、糖尿病の患者の高血圧合併率は約70%、高中性脂肪の合併率は約40%なんだとか。まさに、トリプルリスクを実証するようなデータだが、ではその先にあるものは何なのだろうか。
血圧・血糖・血中脂質は、血管・血液に関する健康指標。これらが悪くなるということは、動脈硬化のリスクも高くなるということ。そして、動脈硬化は心筋梗塞・脳梗塞・脳出血など、命にかかわる重大な疾患を引き起こすこともある。トリプルリスクが怖いのは、こうした重大疾患のリスクも増大してしまうことにある。高血圧・高血糖・高血中脂質はそれぞれ、それだけでも疾患を引き起こすリスク因子ではあるが、例えばリスク因子の数が3~4になると、0の場合に比べて心筋梗塞や狭心症のリスクが35.8倍になってしまうのだ。怖い現実を突き付けられた気分だが、そうならないためにも、リスク因子となる生活スタイル、とくに食生活の改善が求められるというワケなのだ。
◆トリプルリスクを解消するには、食生活で「塩分」「糖分」「脂肪分」の3つ同時ケアが必要!
トリプルリスクは、血圧・血糖・血中脂質が1つでも悪くなると3つとも悪くなる可能性があること。そうであれば、その対策も当然「3つの同時ケアが必要となる」(岡部さん)。とはいえ岡部さんによると、生活習慣病は気になっているものの、ケアまでできている人は少なく、さらに3つを同時ケアできている人はわずか1割という。リスクに対する意識と実態の乖離(かいり)が、さらにトリプルリスクの危険性を増大しているようだ。
さて、高血圧・高血糖・高血中脂質を回避するためには、原因となる食生活の改善が急務であることは冒頭で述べた。具体的にはどうするか。管理栄養士・料理研究家の岩崎啓子さん(※正しくは「たつさき」)は、「トリプルリスクの解消には、「塩分」「糖分」「脂肪分」の3つに配慮した食生活を送ること。同時に、適度な運動も忘れずに」という。そして、「お皿を増やす」「“減らす”と“加える”の使い分け」という、2つのポイントを提唱している。
「お皿を増やす」は、主食と主菜の組み合わせではなく、「副菜を追加することで品目数の増加と全体的なボリュームダウンを心がける」ということ。また、「“減らす”と“加える”の使い分け」は、「調味料の使用量を減らし、アクセントを加える」ということ。そのために、素材の味を最大限に生かし、調味料は塩・砂糖・油をバランスよく、なるべく仕上げに使う。アクセントは、酢や香辛料などの風味で料理に変化を付けたり、食感でサプライズを演出するとよいそうだ。
健康のターニングポイントは40代!ともいわれるが、確かに、同世代との会話では健康のことが話題の中心となり、今まで出来たことが出来なくなって少しずつ体も変わっていく。身に覚えのある人も多いだろう。年を重ねると、否応なしに健康リスクの脅威に晒されるものだ。そんなときは無防備でいるのではなく、正しい知識を持ってきちんとした対策をしたい。そのために、「トリプルリスク」を考え、生活習慣を改めて見直すきっかけとしてみるとよいのではないだろうか。
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