エース菅野が打ち込まれ、暗雲漂う巨人にあって、期待の若武者が派手な活躍を見せている。ついに覚醒した4年目の大砲が持ち前の強心臓を発揮して“生え抜きスター”の座を勝ち得ようとしている。
開幕カードの巨人VS阪神は、岡本和真(21)が連日にわたって鮮烈な3ランを放った。特に4月2日の3戦目は、値千金の逆転弾に、スタンドのG党はメガホンを叩いて狂喜乱舞。いつもはポーカーフェイスを貫く高橋由伸監督(43)も一瞬、珍しく白い歯をのぞかせた。
しかし、当の本人はダイヤモンドを回りながら小さくガッツポーズを作ったものの、どことなく喜びは控えめだった。「今日打っても明日打たないと。まだまだこれから」と口にし、周囲のフィーバーぶりをヨソに気を引き締める。
自分は打って当たり前だし、打たなきゃウソ──。何を隠そう、岡本はそう心の中で自分自身に言い聞かせているのだ。この言葉は今年の春季キャンプでも実際に、あの超大物“世界のゴジラ”こと松井秀喜氏(43)を前に言い放ち、驚嘆させたセリフでもある。
2月、2年ぶりに古巣の臨時コーチを引き受けた松井氏は岡本の急成長ぶりに目を丸くした。
「松井さんが特に驚いたのは、岡本のハートの強さです。ウチの若い選手たちは松井さんを目の前にすると、あまりの偉大さにビビってしまい、ついつい遠慮がちになってしまう。だから、せっかく臨時コーチを引き受けてくれても正直、これまでは『ゴジラ効果』が表れにくかった。ところが、今年のキャンプは岡本が、今まで以上に松井さんにガツガツ食らいついていったんです」(球団関係者)
岡本は松井氏に「もっともっと教えてください」「まだまだ、こんなんじゃ足りません」「もう一丁、いや二丁、お願いします」などと拝み倒し続け、心構えばかりか技術論についても質問攻めにしていたほど。
「もともと高橋監督から『強化指定選手』として指名を受けていただけに、松井さんもマンツーマン指導を施すつもりでしたが、本人のあまりの熱意に驚きを隠せない様子でした。だからこそ松井さんは、キャンプ合流初日から最終日まで、7日間ほぼ付きっきりで岡本を密着指導。いつも宿舎へ戻る時に報道陣の囲みに応じていたのですが、岡本が居残り練習をする際は『これから彼の特打を見るので』とそのあとの取材をNGに。そのうえでマンツーマン特訓に及んだこともあったほどです。それだけ松井さんも岡本に入れ込んでいた。岡本は『ゴジラのエキス』を吸い尽くしていましたね」(前出・球団関係者)
2年前の16年も宮崎春季キャンプで、岡本は臨時コーチの松井氏から熱血指導を受けている。しかし、その直後のオープン戦で結果が出ず、期待を裏切って開幕2軍スタート。周囲からは「ゴジラの教えをまったく生かせない」「偉大なスターの行為をまったくムダにした」などとコテンパンに叩かれ、一部のメディアでは〈スランプにハマって自暴自棄になり、ノイローゼになっている〉とまで報じられたものだ。
ところが、当時の状況を知るチーム関係者たちは「むしろ、いい意味で和真は開き直っていた」と口をそろえている。その中の一人は次のように補足した。
「その年のシーズン序盤、さぞや本人は落ち込んでいるだろうと思い、『おい和真、大丈夫か?』と声をかけたんです。そうしたらアイツ、『はあ? 大丈夫って何がですか?』と返してきたんですよ(笑)。さらにこっちの心を見透かしたのか、間髪いれずに『まだ自分は若いんですから、よけいな心配はしないでください』とも真顔で言い放った。アイツはもともと、ビビるタイプなんかじゃない。むしろ逆に緊張とは無縁で、独特の世界観を持った強心臓の男なんです」