「この仮想通貨ってのは、いったい何なんだよ?」
5カ月程前、仮想通貨がネット上で大量に盗まれた事件が世間を騒がせていた頃、殿より、何度か冒頭の質問を受けました。もちろん、いまだ現金オンリーで、クレジットカードすら持たないわたくしに、仮想通貨の説明ができるはずもなく、ただただ困惑するばかりで、この時、殿にお伝えできた仮想通貨情報といえば、風の噂で聞いていた“吉本の芸人さんの中に、仮想通貨で大儲けした人がいること”ぐらいで、それを聞いた殿は、
「いつでもうまいことやるヤツがいるな」
と、軽い驚きを示したのです。
で、その後、殿の仮想通貨への興味もすっかり薄れ、特に話題に出ることもなく、今年上半期の楽屋での主な話題は、メジャー・大谷の活躍、9月開催の「たけし単独ライブ 熊本ツアー」のこと、そして、新たに見つけたカツラ装着芸能人情報、といったものが時間を占めていました。
ところが、3週間程前、いきなり、
「これよ、いいだろ?」
と、何やらゴールドに輝く金貨を殿から手渡されたのです。少し驚くこちらなどお構いなしに、殿は続けて、
「これよ、テレビの美術さんが作ってくれた『ビートコイン』だよ」
と、うれしそうにアピール。何でも、レギュラー番組の美術さんが、あくまでシャレで、殿の横顔のイラストを刻印したコインを大量に作成し、プレゼントしてくれたそうなのです。殿はそのコインを指さし、
「これでいよいよ俺も仮想通貨に参戦だな。ビートコインでひと儲けだな!!」
と、高らかに宣言すると、さらに、
「KGB(殿のネットマガジンね)のよ、毎月の登録料をこれで清算できるようにしたりできねーか?」
と、かなり具体的な案までも追加してきたのです。
さらにさらに、
「『ビートきよしコイン』ってのもあるな。出す前からすでに大暴落で値がつかないやつ」
と、例によって“きよし貧乏ネタ”をさらりと放り込んできたかと思えば、これが“とどめ”と言わんばかりに、
「もうよ、手っとり早く、これ1枚5000円で売るか? 1枚5000円。2枚で12000円!」
と、まさかの、買えば買うほど1枚の単価が上がる、おかしな野望を語る殿なのでした。
もちろん、そんな殿の提案に、その場にいた誰もが、〈たけしさん、仮想通貨はあくまで仮想であって、現物のコインがあるのはおかしいのでは? あと、勝手に作った通貨の売買は、偽造貨幣として、どう見てもまずいのではないかと‥‥〉と、心の中でつぶやいたはずです。
で、最終的に大量のビートコインは、わたくしが管理することになり、今、自宅に無造作に保管してあります。
どなたか、興味のある方はご一報ください。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!