今年のプロ野球ドラフト会議には、今夏の甲子園に惜しくも出場できなかった高校生の中にも、注目選手がいる。
まずは日大鶴ケ丘(西東京)の勝又温史。西東京都大会決勝の日大三戦で痛恨のサヨナラ2ランを浴び、惜しくも甲子園出場を逃した。大会中は計25回を投げ、25奪三振をマークした、最速152キロを誇る本格派右腕である。また、打っては主に5番を務め、左右に長打を放つ左の強打者である。今夏の予選では打率4割5分8厘、1本塁打、打点10と大暴れした。投手での指名が濃厚だが、プロ入り後に打者転向してもおかしくない素材である。
倉敷商の(岡山)の引地秀一郎も威力ある直球を武器とする大型右腕。今夏の県予選では準決勝で敗れたものの、計24回を投げ24奪三振。中でもプロ8球団のスカウトが集結した初戦の岡山南戦では被安打3の13奪三振で完投勝ちを収めた。しかも、この時引地はみずから決勝のサヨナラ打を放っている。まだまだ荒削りながらも最速151キロを記録するなど、身長188センチ、体重84キロと恵まれた体格を誇る素材型のピッチャーと言えよう。
今年の夏は県予選準々決勝で敗退し、全国の舞台に駒を進めることはできなかったが、昨年夏に甲子園出場を果たし、聖地を沸かせたのが聖心ウルスラ学園(宮崎)の最速149キロ右腕・戸郷翔征だ。2試合で計16回1/3を投げ12奪三振。身長185センチ、体重74キロの長身細身のスリークォーター右腕で、多彩な変化球を持つが、特に伸びのあるストレートに交えた120キロ前後で切れ味鋭く曲がる2種類のスライダーで三振を奪うタイプである。
今年9月に行われたU‐18日本代表との壮行試合に宮崎県高校選抜として出場。根尾昴や藤原恭大(ともに大阪桐蔭)、小園海斗(報徳学園)ら、ドラ1候補が顔をそろえた強力打線を相手に5回1/3を投げ被安打5の9奪三振という快投を演じた点は見逃せない。
一方、打者に目を向けると、捕手では関東一(東東京)の石橋康太の評価が高い。高校通算57本塁打を記録した強打に加え、1.9秒台の二塁送球で捕殺をマークする強肩も魅力。今年の夏の予選ではベスト4敗退も、1年時の夏には甲子園に出場し、3打数2安打1打点。さらにベスト4で敗れたものの、2年時の夏の東東京都大会では4戦連発をなしとげるなど、振り切るスイングで左右に強い打球を弾き返し、長打を放つ右の強打者。“打てる捕手”として注目されている。
同じ東京では早稲田実(西東京)の4番サード・野村大樹にも注目が集まる。あの清宮幸太郎(北海道日本ハム)の1年後輩ながら、当の清宮を差し置いて入学時から名門の4番に座った逸材。甲子園には2年春の選抜に出場し、2試合で9打数5安打2打点、打率5割5分6厘をマークした。高校通算68本塁打。勝負強い打撃が持ち味で、内外角の球を捉えて左右に長打を打ち分けられる技術を持っている。
西日本からは名門・天理(奈良)が誇るショートストップの太田椋を挙げたい。3年夏の県予選こそ、決勝戦で惜敗して甲子園出場はならなかったが、1年の夏からレギュラーを張り、2年夏には打率4割の活躍でチームを県大会優勝に導いた。身長181センチ、体重76キロの細身のショートで、高校通算31本塁打と長打力には欠けるが、高2の夏には一塁到達タイム4.6秒強をマークするなど、俊足を誇る。打ち損じもあるが、振り切るスイングで鋭い打球を放つ、注目の右の好打者である。
(高校野球評論家・上杉純也)