2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて注目を浴びたが、無形文化遺産の先輩格で2010年に登録された地中海料理が長寿食、健康食として世界中で人気が高まっている。
2003年に制定されたユネスコの無形文化遺産。食の領域では、和食の他にフランス料理、トルココーヒー、キムチなどが登録されているが、中でも2010年に登録された地中海料理が「糖尿病からガン予防、長寿にまで効果がある究極の食事法」と、世界中で注目されている。
そもそも地中海料理というのはスペイン、ギリシャ、イタリア、モロッコ、キプロス、クロアチア、ポルトガルで食されている、「地中海沿岸で収穫されるオリーブオイル、穀物、果実と野菜、魚、乳製品、肉類そして多くの調味料とスパイスで構成される伝統料理」。そしてこの料理が最も理想的に栄養のバランスがとれている(「地中海式ダイエット~ヴィーナスの食卓」TBSブリタニカ、川路妙・著)というのだ。WHO(世界保健機構)の研究でも「栄養学的に最良の食事は、地中海地域の伝統的な食事」と発表しているし、この食事を続けている人たちは糖尿病のリスクが8割以上も低下する(スペインのナバラ大学の研究)、ガンのリスクが低下する(米国ハーバード大学の研究)、総死亡リスクが2割低下する(米国国立がん研究所)、軽度認知障害(MCI)のリスクが3割低下、アルツハイマー病に進行するリスクが半減する(米国コロンビア大学の研究)と、続々「効能」が報告されているのだ。
地中海式食事法はコレステロール値、血糖値、および血管の健康状態を改善することが示されており、糖尿病、高血圧、心臓発作や脳卒中などの予防に役立つという。すぐにでも真似たくなるが、いったい食事なのか。
「毎日、野菜や果物、低脂肪の乳製品、オリーブ油を摂る。魚はたくさん食べる。豚や牛などの赤肉料理は月に1、2回程度。週に数回、卵、鶏肉や豆類、ナッツ類や種子類、イモ類を食べる。赤ワインも適度に飲む」(料理研究家・萩原千恵氏)
食生活が違う私たち日本人が同じ調理法で毎日摂り続けるのは難しいだろうが、素材は自然の良いものを使い、多くの種類をバランスよく食べる、食事を楽しむ気持ちのゆとりを持つ、など学ぶべき健康の基本があるようだ。
(谷川渓)