大谷のスロースタートをよそに、昨年、大阪桐蔭で甲子園春夏連覇を成し遂げた阪神・藤浪は、自主トレ中から何度もブルペン入りを果たしている。「浪速のダルビッシュ」の評価は高まるばかりだ。
「シャトルラン、持久走、背筋など、どの練習も高いレベルでこなし、フィールディングの技術はスカウトの報告以上だったといいます。197センチという高身長にもかかわらず体を持て余すことがなく、球を低めに集める制球力もある。『高校クラスではバランスも含めてナンバーワン。現時点では確実に大谷より上。大人と子供の差』とまで断言するスカウトもいました」(前出・プロ野球担当記者)
ただし、「10年に一人の逸材」候補とはいえ、高卒ルーキーに多くを期待するのは酷というもの。
「クイックと牽制は正直、下手ですね。試合で一塁ランナーを目で見やるしぐさを『見てないんじゃないか』と対戦校に見破られたこともある。これまでは素質でマイナス面もカバーしてきましたが、プロで活躍するにはまだ課題が多い。ところが、関西メディアが久々のスター候補を前にして、球団に『一軍にいてもらわないと商売にならない』と頭を下げているというんです。金の卵ゆえに周りの都合で振り回されることが心配されます」(球界関係者)
先にも指摘したように、阪神には高卒ルーキー育成について不安が付きまとっている。とはいえ藤浪には、周囲に翻弄されることなどないクレバーさが備わっているという。
「口癖は『自分の投球内容が悪くてもチームが勝てばいい』です。昨年、大谷が160キロを出した際にも藤浪は『何を言われても他人は他人です。僕は161キロを出したいとは思いません』と淡々と話しましたね。流されることがないんです。球団関係者も『周りが騒いでも冷静でいられるだろう』と見ています」(前出・スポーツ紙デスク)
プロ野球評論家の野村弘樹氏が言う。
「藤浪には大舞台で投げてきた経験があるうえ、合同自主トレ初日からブルペンに入るような準備もしっかりとできている。ケガだけは怖いので無理はさせられないが、開幕一軍で投げる力も十分にあると思います。昨年のソフトバンク・武田のように、慎重にシーズン途中からの一軍合流となっても7勝ぐらいは積み上げられるのではないでしょうか」
一昨年のドラフトで巨人に入団する腹づもりが、日本ハムの横やりがあって1年の浪人生活を送った東海大・菅野智之(23)は、昨年のドラフトで単独指名を受け、晴れて巨人の一員となった。連覇を目指す巨人が2年越しで獲得したエース候補だが、やはりブランクが不安視されている。
野村氏が言う。
「本人は大丈夫だと言っていますが、実戦感覚をいかに取り戻せるかにかかっています。いくら練習で登板しても、緊張感の中で行われる対外試合でのピンチやプレッシャーを経験せずに1年間もブランクがあることは心配です。まして先発のコマがそろった巨人では、ローテに食い込むことが活躍の第一条件となる。もちろん、そこまで残れば10勝できる力はあると見ています」