阪神・藤浪晋太郎が二軍に逆戻りしたのは、7月27日だった。前日の広島戦ではアウトカウント1つを取っただけ、打者7人に4四球、2適時打と大炎上してしまった。
「練習もしっかりやっていたし、復調は当分、無理かも」(在阪記者)
「気持ちは折れていない」とも話していたが、そんな藤浪の心の拠り所が判明した。山本五十六だ。言わずと知れた第二次大戦中の連合艦隊司令長官で、常在戦場の精神をまとめた名言も多い。その格言を座右の銘とする経営者も少なくない。藤浪が自宅の壁に貼り出しているのは「オトコの修行」の言葉。
〈苦しいこともあるだろう。云い度いこともあるだろう。不満なこともあるだろう。腹の立つこともあるだろう。泣き度いこともあるだろう。これらをじつとこらえてゆくのが男の修行である〉
藤浪はこの言葉を読み、涙をこぼすときもあるそうだ。ノーコン病でもがき苦しむ自分と、戦争に反対した連合艦隊長官を重ねる心境もわからなくはないが、藤浪は平成生まれ、それも「ゆとり世代」である。五十六ファンになった経緯はナゾだが、「ジッとこらえて」の言葉が二軍降格後も前向きにさせたようだ。
「一時期、スピードボールを抑えて、ストライクを取ろうとしていましたが、『ボールを置きにいったら、オレはただのノーコンピッチャーじゃないか』と開き直って、また、腕を思い切り振るようになった」(前出・在阪記者)
“五十六効果”で復調してもらいたいが、今のところ、金本監督の喝は壁に貼り出していないそうだ。
(スポーツライター・飯山満)