3月23日開幕の春の選抜高校野球の出場校32校が決まる選考会が1月25日に開催される。前回お伝えできなかった西日本の出場校を予想していこう。
近畿地区の一般枠は例年6枠。まず近畿大会の優勝校・龍谷大平安(京都)と準優勝の明石商(兵庫)は安泰。他にベスト4に残った履正社(大阪)と智弁和歌山は、準決勝でともにコールド負けしたが、履正社は秋の府大会、智弁和歌山は秋の県大会を制し近畿大会に出場した“1位校”で問題ないだろう。
残り2校は近畿大会準々決勝で敗れた4校となるが、頭一つ抜けているのが、龍谷大平安に4‐5の接戦でサヨナラ負けした市和歌山だ。最後の1枠を準優勝の明石商に0‐4で負けた報徳学園(兵庫)、ベスト4の履正社に0‐5の福知山成美(京都)、ベスト4の智弁和歌山に2‐5の大阪桐蔭が争う形だが、この中では序盤から終盤まで小刻みに失点を重ね0‐5で完敗した福知山成美が不利。同じ京都府勢の龍谷大平安が選出確実で地域性でも拾われにくそうだ。逆に同じ完封負けでも準優勝校の明石商相手に0‐0の接戦を続け7回裏と8回裏で計4失点の報徳学園は、同じ兵庫勢に負けたとはいえ、内容で有利にも思える。
だが、“興行”的な見方をすれば、やはり大阪桐蔭にも目がありそう。何しろ大阪桐蔭がもしこの春の選抜に出場すれば、高校野球史上初の「春・夏・春の3季連続優勝」に挑めるからだ。話題性は十分で、地元でも人気の大阪桐蔭は集客力も期待できる。いずれにせよ近畿の最後の1枠は激戦になりそうだ。
続いて中国地区と四国地区。ここは2地区合わせ5枠が慣例で、言い換えれば、両地区の3校目に選ばれたチーム同士が比較検討される。その意味で中国地区の優勝校・広陵(広島)と準優勝の米子東(鳥取)を除いた「3校目」は、準決勝で広陵に8回0‐7でコールド負けした創志学園(岡山)よりは米子東相手に延長13回タイブレークの末、5‐6で惜敗した市呉(広島)が有利。創志学園が選ばれかどうかは今秋のドラフトで注目の目玉エース・西純矢の評価次第だろう。
一方の四国地区も優勝の高松商(香川)と準優勝の松山聖陵(愛媛)を除く「3校目」は準決勝で高松商に4‐10の高知商より、松山聖陵に3‐5と善戦した冨岡西(徳島)がやや有利。
仮に市呉と冨岡西で5枠目が争われることになれば、ここは過去1度選抜出場歴のある市呉よりも選出されれば初出場となる冨岡西のほうが有利だが、後述する「21世紀枠」に冨岡西が選ばれる可能性が高く、市呉が選出されると予想する。
一般枠最後の九州地区は例年4枠。今秋の九州大会で2度の延長戦を制し、初優勝を飾った筑陽学園(福岡)と、その筑陽学園に決勝戦で5‐7と接戦を演じた準優勝校の明豊(大分)、そして準決勝で筑陽学園と延長12回の死闘のすえ3‐5で惜敗した大分は確定だろう。最後の4枠目は、ベスト4に残った日章学園(宮崎)で収まりそうなものだが、敗れた準決勝で日章学園は明豊相手に4‐10。しかも6回終了時には1‐10とコールド負け寸前で、7回裏に3点を返しギリギリコールドを回避したが、この試合内容なら準々決勝で筑陽学園相手に延長13回タイブレークの末0‐1でサヨナラ負けした興南(沖縄)に逆転の目があるとみる。九州本土から3校、沖縄県から1校と地域性のバランスもよくなるからだ。
最後は「21世紀枠」。これは、部員不足などの困難を克服したり、文武両道を実践していたり、ボランティアなど地域に貢献したチームから前年の秋季大会で一定の成績を収めた高校が選抜される。例年9地区からの推薦校で選考され、今年は北海道地区から釧路湖陵、東北地区は古川(宮城)、関東東京地区は石岡一(茨城)、北信越地区は金津(福井)、東海地区は清水桜が丘(静岡)、近畿地区は八尾(大阪)、中国地区は平田(島根)、四国地区は冨岡西(徳島)、九州地区は熊本西(熊本)と9校が推薦された。この中から東日本、西日本から各1校、地域に関係なく1校の3校が選出される。
すると、明治神宮枠を含めて出場校が2校となる北海道からは選出しにくくなる。さらにある程度の強豪校ではあるが、県大会4強止まりの石岡一と府大会16強止まりの八尾も弱い。残った6校のうち、東日本からは県大会準優勝で東北大会ではベスト4にまで進出した古川、そして西日本からは中国・四国の5枠目を市呉と争った冨岡西が選ばれそうだ。古川が1897年、冨岡西が1896年と、ともに創立120年を超える伝統校でOB・OGには各界著名人も多い点も強みだ。残る1枠は県大会準優勝で地区大会もベスト8にまで進出している熊本西。このチームは昨年11月に県内の高校と練習試合をした際、相手投手の投球が自軍打者の頭に当たり部員が亡くなる痛ましい事故が起きている。選考委員に“出してあげたい”心情が微妙にはたらくのではないか。
──2回にわたり今年の春の選抜の出場校を予想してみたが、はたして全国どの32校にひと足早い春が訪れるだろうか。
(高校野球評論家・上杉純也)