第3回WBCの戦いの火蓋は切って落とされた。ふだんどおりの力を出せていれば、すでに第2ラウンド進出を決めているはずだ。この先、さらなる強国が日本を待ち受けるが、ライバルたちは王者の弱点を調べ上げていたのである。
日本代表が連覇したWBCの過去2大会については、「日韓だけが盛り上がった」「真の世界一を決める大会ではない」などと揶揄する向きもあったが──。
「今大会は一時、日本が不参加の雲行きとなって開催も危ぶまれた。とはいえ、WBCはMLBにとって“ドル箱の大会”です。日本に頼らずとも大会が盛り上がるよう、開催国・米国の本気度も上がっている。是が非でも優勝という空気ではないですが、少なくとも日本の3連覇だけは阻止しようと躍起になっています」(在米ジャーナリスト)
もちろん、今大会も日本代表は優勝の筆頭候補だ。
そのため、侍ジャパンのデータ分析が進んでいるというのである。
その情報源について、スポーツ紙デスクが言う。
「メジャー各球団はFA、ポスティングの市場である日本にスカウトを派遣しています。たとえ自球団に獲得の意思がなくとも、ライバルチームに入団した時の対策として、抜かりなくデータ収集、解析をしている。そして、今大会で日本への雪辱を期す米国代表は、ツテのある各球団スカウトたちから侍ジャパンの情報を入手しています」
そんなスカウトの一人が、レッドソックスの環太平洋担当の国際スカウトで、豪州代表監督でもあるジョン・ディーブル監督(50)だ。
すでに侍ジャパンは2月23、24日に、ディーブル監督率いる豪州代表と壮行試合2連戦を戦い、2試合目には10対3と大勝したものの、初戦は終盤までリードを許し3対2で辛勝する展開だった。
特に3回を投げたエース・田中将大(24)の、4安打4四死球2失点というピリッとしない姿が目立ったものである。豪州代表関係者が明かす。
「ディーブル監督は田中について、『スピード、制球力、変化球、全てすばらしい』と評価したうえで、『でもスプリット(落ちる球種)を投げる時は癖で見抜けるよ。修正しなければ、(他の球種を)狙われるだろう』と口にしているんです」
確かに壮行試合では、田中が投げるスプリット系のボールは見逃され、カウントを苦しくするシーンが見られた。
格下の豪州代表相手だったから大炎上せずにふんばれたのかもしれないが、多くの現役メジャーリーガーを擁する米国代表に、こうした情報がもたらされているようなら結果はどうなるか‥‥。
「ディーブル監督はかねてより米国代表のジョー・トーリ監督(72)と昵懇だった。そして、豪州出身でありながら米国の市民権も得ているディーブル監督は、トーリ監督から『データを提供してくれ』と要請され、『もちろん』と即答したそうです」(NPB関係者)
本番直前に直接肌を合わせた国の監督が、いわば“米国のスパイ”になるやっかいな展開になってきたのだ。