いよいよ現実味を帯びてきた日本のTPP参加。産業によっては躍進のチャンスだったり、あるいは衰退の危機に陥るだけに、賛否両論の意見が飛び交っている。トータルでプラスになれば、確かに「国益」となるかもしれない。だが、ちょっと待て。国のことよりも、俺の会社はどうなるんだ~!
「一方的に、全ての関税撤廃をあらかじめ約束するものではない」
2月22日(日本時間23日未明)に開かれた安倍晋三総理とオバマ大統領の日米首脳会談。民主党政権での煮えきらない態度から一転、安倍総理が条件付きながらTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への交渉参加を表明したことで、事態は、大きく動きだしたと言えよう。
TPPとはひと言で言えば、アメリカやオーストラリアなどのオセアニア、シンガポールやベトナムなどの東アジアと日本を加えた、環太平洋9カ国間による貿易での関税を撤廃するという経済連携協定。これが結ばれれば、高い関税で手厚く保護された米を中心とした農作物は、国際競争にさらされ、壊滅的な打撃も想定される。そのため、農村部を大票田に持つ自民党議員を中心に反発の声が上がり、国会内でも交渉参加前から喧々諤々の議論が始まっている。
では仮に、全ての品目の関税を撤廃することを目的としたTPPが結ばれた場合、はたしてどの業界が躍進し、衰退していくのか──。経済評論家の荻原博子氏が語る。
「日米双方には国内事情で、それぞれ守りたい品目というのがあります。一般的には、アメリカでは自動車を中心とした工業製品。日本だと自給率や文化にも関わる、米を中心とした農作物です。しかし、その一方で、守りたい品目ばかり主張していては自由貿易にならないので、代わりのバーターとして、規制を取り払い自由化を容認する業界も出てくるでしょう。つまり、そのバーター役として差し出される業界が最も割りを食うことになるでしょうね」
実際、アメリカがTPP参加で虎視眈々と日本マーケットへの進出・拡大を狙っているのが、保険業界だという。前出・荻原氏によれば、
「アメリカは以前から、『簡保を自由化しろ』や『郵貯は民営化したんだから政府保有の郵貯株を売れ』と、日本に迫ってきています。すでにアメリカの生損保会社は日本にも入ってきていますが、少額で審査もなく入れて、なおかつ葬式などにすぐに間に合う簡保や、たった2000円で補償が付いて、割り戻しまである共済などは、さらなる商機拡大を狙う外資系金融機関にとっては邪魔でしょうがない。生損保業界は確実に狙われるでしょう」
当然、外資参入が激化すれば、価格競争になり、厳しい淘汰も起こる可能性が高いと言えよう。