日本が誇る産業といえば、戦後の高度経済成長を支えてきた電機メーカーやアパレル産業なども忘れてはならない。
「いずれの業界も、世界的に見れば、一人勝ちのグローバル企業が利益を総取りする構図。アパレルでは、H&Mやユニクロなど、ごく限られた企業が牛耳っている。また電機メーカーでは、韓国のサムスン電子が日本のお家芸を駆逐し、さらにはスマートフォンでもアップルのアイフォーンと並ぶ存在感を示している。要は日本では、ユニクロのファーストリテイリングが一人、気を吐いている状態」(経済専門誌記者)
そして、最も割りを食うのは「貧乏人」という厳しい現実だ。荻原氏は、「現在のアメリカの『格差社会』こそ日本の未来だ」と断言する。
「自由化と言えばいいイメージですが、逆に、みんなが競争にさらされるということです。強いライオンが食べるのは、弱者のシマウマで、弱者はさらに弱者を食べるというのが、競争社会の掟。大きな変化を被るであろう食品、医薬品業界が変われば、日本が誇る安全性も失われます。金持ちは国産の高い食べ物を買って、高額医療も受けられる。一方の貧乏人は、どこで作ったかもわからない食品を買う生活になる。映画監督のマイケル・ムーアが製作した『シッコ』では、国民皆保険でないアメリカの保険制度を告発しています。足をケガしたら自分で縫わなければいけない社会になるかもしれない。貧富の格差が大きいアメリカ社会に近づくというイメージですよ。決して、アメリカが日本に近づくことはない」
TPP参加表明に好感を示したマーケットは活気づき、日本経済の目先は一見、好調だ。だが、規制撤廃でガタガタになる業界と、高笑いする業界が、二分されることだけは間違いない。アベノミクスが目指す未来は、思いのほか厳しいものになる。そんな予感が捨てきれないのだ。