侍ジャパンには、王者らしく堂々たる戦いぶりを見せてほしかった。現時点でアメリカ行きを決めていると信じたいが、出だしからどうにも頼りない。ふがいない戦いぶりには、前中日投手コーチの権藤博氏もご立腹。舌鋒鋭く、一刀両断するのである。
2次ラウンド初戦の台湾戦は、終始リードを許す展開の末、延長戦を制して4対3で勝利しました。
一見、劇的な試合に見えますが、“見下ろしの野球”ができていないから、こんな長い試合になったんですよ。
こうまくしたてるのは、前中日投手コーチの野球評論家・権藤博氏(74)だ。王者の風格がうかがえない、侍ジャパンに辛口エールを贈るのである。
日本代表はWBCで過去2連覇していますが、そのために今回は“守りの気持ち”をすごく感じるんです。
なまじっか2連覇したばかりに、「3連覇しないと」と守りの気持ちになって、無難に無難にいこうとしているから、日本野球のよさがまったく出ていない。
例えば、日本のよさは緻密なピッチングで、今大会も緩急はつけています。ところが、球種を変えているだけで、強弱はつけていない。直球だけ投げる人はいませんから、緩急は誰でもやります。強弱というのは、同じ直球でもスピードを変える。緩いスライダーと速いスライダーを使い分けたりすることです。
でも、大事にいこうとするあまり、全て目いっぱいの「強」でいっていた。
チームがそういう雰囲気になってしまっていたんですね。そういう時は、ガンガンいかないで、抜いてごらんなさいって。
例えば、1次ラウンドの順位決定戦のキューバ戦なんかは、投手陣はいい球を投げていて、計10個も三振を取っているけど、相手はビクともしてないもんね。バットを振って、振って、振りまくってた。
それに対して、向こうは135~138キロ程度のスピードしか出ない、日本なら峠を越えたような投手ばかりで、長野(久義=28=)や坂本(勇人=24=)が三振するようなピッチャーじゃなかったですよ。でも、あいつらの緩い球を投げる勇気にやられてしまったんです。
一方で、バッターのほうも、尻もちついてもいいから思いっ切り振ってやろうというのがなかった。
例えば、キューバ戦で6回、中田(翔=23=)が1死一塁で3-0というカウントになり、ストライクを取りにくる甘いボールを見逃しましたが、あそここそ思いっ切り振る場面でしょう。2点のビハインドだから「待て」の場面だという定石はありますが、思い切り振られるほうが投手は怖いものなんです。
総じて、振らないから四球は選んでいるけど、相手にプレッシャーがかけられず、迫力が伝わらないから点は取れない。
特に1次ラウンドの格下の相手国は日本に対してすごい投手、すごい打者という認識があったでしょうから、「何でこんなに空回り、凡打してくれるんだろう」と思ったはずですよ。