創設されてまだ14年。今週のメインとして行われるヴィクトリアマイルは、年数の浅いGI戦だが、出走資格は4歳以上の牝馬限定戦。消長の激しい牝馬による競走だけに、不確定要素が多い。
はっきりしているのは、若い馬が優勢だということ。6歳になると繁殖が待っていることもあるが、牝馬は牡馬に比べると、一気に花開いてピークが短いことが大きい。
これまでの13年間で、4歳馬は半数の7勝(2着4回)。5歳馬は4勝(2着2回)、6歳以上は、わずか2勝(2着1回)というありさまだ。やはり、生きのいい4、5歳馬に目を向けるのが馬券の筋というものだろう。
顔ぶれを見てみる。大きく抜けた存在は見当たらないが、それでも各馬のレベルはかなり高く、力が接近していることを思うと、相当に激しい競馬が展開されると予想される。馬券的にも人気どおり簡単には決まるまい。
過去13年間、馬単での万馬券は6回(馬連3回)。1番人気馬が3勝(2着4回)、2番人気馬は2勝(2着0回)。こうしたデータからも、一筋縄で収まらないことがわかる。
簡単に人気どころで決まらないのであれば、穴党の出番である。最も期待を寄せてみたいのは、サトノワルキューレだ。
3歳時はGIIIフロー 3歳時はGIIIフローラSを勝ち、オークスで3番人気に支持されたほどの馬。この時は女傑アーモンドアイに歯が立たず6着に敗れたが、使いづめできたため、すでに調子のピークが過ぎていた印象だった。
その後は、さすがに立て直すのに時間を要し、4カ月ぶりのローズSは6着。さらに半年休んで、復帰戦となったGII金鯱賞も11着と冴えなかったが、前走の阪神牝馬Sでは、なかなかのパフォーマンスを見せてくれた。
スタートで後手を踏み、その直後に他馬に寄せられて後方からの競馬。それでいながら、先行馬ペースの中、直線は強烈な末脚で勝ち馬にコンマ3秒差の9着と迫ってみせた。このレースが初めてのマイル戦だったことを思うと、上出来の内容である。
3歳時は長丁場向きのイメージがあったが、今はどうやら、マイル戦でこその馬に変貌しているととれる。陣営としてもそう判断できたからこその挑戦なのだろう。多く使われていないうえに、明け4歳馬。まだ伸びしろは十分だ。
実際、休み明け3戦目ということで、この中間の状態は大きく良化している。稽古の動きは軽快そのもの。角居調教師はじめ、厩舎スタッフは「馬体が減らなくなったし、ここにきての充実ぶりが目立つ」と、口をそろえて調子のよさを強調するほどだ。
角居厩舎は2頭出しで、一方のカンタービレが有力候補と見られ、人気になるだろうが、馬券的な妙味としては、サトノワルキューレのほうだ。
カンタービレと同じディープインパクト産駒なのだが、母系がおもしろい。母のヒアトゥウィンは、ブラジル産。亜流の血筋だが、米国の芝GIII戦を勝ち、南アフリカではガーデンプロヴィンスSなど、GI戦で2勝している。南アフリカの一線級は欧米でも通用する馬が多く、今回の顔ぶれの中に入っても決して見劣りすることはない。
サトノワルキューレは、フローラSを勝った時も最速の上がり脚を使ったほど。直線の長い東京コースは間違いなく向いており、好走必至だ。良馬場条件に大きく期待したい。