「三本の矢」政策で日本経済を再生させるはずのアベノミクスが「本性」を露呈した。庶民の生活を救うどころか、金を払えば会社が正社員を解雇できるという信じられない法案が真面目に検討されているのだ。サラリーマンを奈落の底に叩き落す悪魔のルール。日本は失業者であふれかえる!
議長・安倍晋三総理(58)、副議長に甘利明経済再生担当相(63)、茂木敏充経産相(57)。メンバーには田村憲久厚労相(48)や竹中平蔵元参院議員(62)、楽天・三木谷浩史会長兼社長(48)ら多数の国会議員と著名財界人が名を連ねる。政府が主導するこの「産業競争力会議」で今、アベノミクスの三本目の矢である「成長戦略」が話し合われているのだが、その中身たるや、とんでもないものなのである。
3月15日、官邸4階の大会議室で開かれた第4回会議の議事要旨を見ると、竹中氏はこう発言している。
〈労働移動型の解雇ルールへのシフトは大変重要。判例に委ねられているのはルールとして不明確であり、明文化すべき。金銭解決を含む手続きを明確化することが必須である〉
簡単にいえば、これは「会社が金を払って社員を自由に解雇できるシステム」を作ろう、ということだ。
竹中氏は、さらに「文藝春秋」4月号で三木谷氏と対談し、恐ろしい論理を展開させている。
〈竹中 日本の正社員は世界で最も守られています。
三木谷 一度雇用されれば、正社員というだけでどんなにパフォーマンスが悪くても、怠慢でも、一生賃金を得られる。これはどう考えてもおかしい。
竹中 競争のないところに成長は絶対にありません。
三木谷 正社員の割合が高い中高年層が優遇されるため、若年層が活躍する機会を奪われているのです〉
全国3300万人のサラリーマンが驚愕する「クビ切り自由化」法案。この提案を受けて、民主党・中根康浩元経産政務官(50)は3月22日の厚生労働委員会で田村厚労相にかみついた。
「お金さえあれば何でもできる、という拝金主義の大もとになってしまう。雇用の受け皿がきちんとできれば働き場所の転換、移転は可能性があることだろうが、それ以前に金銭解決制度が議論されているのは順番が逆ではないか」
中根氏にあらためて話を聞くと、次のように懸念を表するのだ。
「40代から50代にかけてが最もターゲットになりかねません。クビを切っておいて、建て前として若い人の雇用が必要だと言って入れ替えていく。長期住宅ローンを組み、教育費に最も金がかかる世代にシワ寄せが来るわけです。古くさい産業から、新しい雇用を必要としている成長産業、例えば再生可能エネルギー産業などへの労働力の移動だというが、そこが数的にも確固たる土台となっていない。そもそも企業が生き残らないと雇用が増えない、守れないという考え方なのですが、まず受け皿があったうえでの手続きがなされないといけないのに、これではアベコベノミクスですよ」