いったい、なぜ仕事に就けないのか。実は、「求人を出しても採用しない、いわゆる“カラ求人”の企業が多い」
と、多くのハローワーク利用者が指摘しているからだ。先のジャーナリストが言う。
「ハローワークには、大手企業の人事部長から天下った求人開拓員なる人物がいて、民間の人材会社経由で求人を募っている。これが問題なのです」
先のB氏は開拓員に応募したことがあるという。
「開拓員は地元の企業を回って『無料だから求人を出してください』とお願いする。だからまったく採用する気がないのに、融資を受ける目的で求人を出し続ける企業もあるし、単に有力者に頼まれたからしかたなく出すということもある。1カ月ごとに求人が更新され続けて、ずっと開店休業のような状態なんです」
有効求人倍率を一定数に維持しようという政治力が、現場の深刻な実態を無視しているのだ。求人の中には「ブラック企業」も多数、紛れ込んでいる。
「休日出勤当たり前、残業代も一切無視するなど、雇用形態がメチャクチャなものを指します。再就職できると思ったら、ブラック企業ばかり。いやそれどころか、ブラック以下のところもある。例えば『保険会社の調査員 中高年も歓迎』の求人に応募してみると、交通事故現場へ調査に行き警察や当事者に話を聞いて分厚い事故調査レポートを書く仕事。1回1万円という歩合制でした」(B氏)
これは、実は会社員でもパートでもなく「個人事業主」として委託契約を結ぶケースであり、
「時給換算してみると、かつて民主党政権が目指した雇用契約上の『最低時給1000円』に届かないどころか、実質300円台という悲惨なもの。経費も出ず、保険もありません」(前出・ジャーナリスト)
さるハローワーク関係者も、こんな事実を明かす。
「『経営コンサルタント 中高年歓迎』に応募した男性が、言われたとおりにホームページを見てみると、別の画面が出てくる。それをクリックすると、実はお金を貸す怪しい感じの金融業の仕事だった。フレコミとまるで違う業務で募集が行われるなど、実は怪しい仕事が多い。実態は振り込め詐欺だったという違法行為の紹介もありましたね」
ハローワークを管轄する厚労省の職業安定局は「カラ求人」などの実態は「把握できていない」と言う。募集しているものと仕事内容が違ったり違法行為だったりするケースについては「労働条件と違う求人票を記載されるのは非常に問題がある。必要に応じて求人内容を訂正するように」と指導。だが実際は、犯罪に関わるような会社のチェックまでは手が回らない。
「次のことを何も決めないで早期退職しても、仕事はありません!」
こう断言するのは、経済評論家の荻原博子氏だ。
「次の仕事先が決まっていれば、割増退職金をもらって転職できる。決まっていなければ、特に中高年にはデメリットしかない。起業するにしても、会社を辞める前に事業計画を金融公庫などに出してみて融資を受けられなければ、失敗する可能性は高い」
やはり今の時代、定年まで会社にしがみついていたほうが賢明なのか──。
「会社にいるうちに、他にいい仕事があるかを探ってみることです。そのためには社内で飲み会をやっている場合ではない。異業種交流で、さまざまな業界の人たちとつきあってコネクションを作っておく。また、教育訓練給付金などを使って、転職しても使ってもらえる資格を自分でゲットしておくことです」(荻原氏)
時流に乗って甘い夢に浮かれている場合ではない。