坂井さんは、病院内のお気に入りスポットであったスロープの手すりに上がり、雨上がりの神宮の森の新緑を眺めようとして誤って転落し亡くなってしまった──。それが、あの死の真相だったのか。
その後、様々に報じられた「自死」ではなく、「事故」であったということは、以下の話からも間違いがないだろう。
当時、ある警察関係者がこんなふうに話していた。
「自死なら3メートルの高さから、というのがまず不自然です。すでに癌で苦しい闘病生活を送っている人が自死する時に、そんな“不確実な”方法を選ぶとは思えないからです」
さらに、専門家の目から見ると、状況そのものが自死とは考えにくいのだという。
「直接の死因が、後頭部を強打しての脳挫傷ですからね。自死で頭部から落ちる場合、後頭部から着地することはほとんどないんです。あるとすれば、屋根を修理していて足を滑らせた事故などの場合です。坂井さんのケースは、この典型例に見えますね」(前出とは別の警察関係者)
〈「事故」であったなら、遺族が病院の管理責任を追求していないのはおかしい、これこそ「自死」である証拠だ〉などと報じるゴシップ誌もあった。
「それについては、周囲が坂井さんが病気と十分に闘ってきたことを知っており、もう静かに休ませてあげたい、という気持ちが大きかったのではないでしょうか」(ワイドショー関係者)
坂井さんが目標にしていたという秋の復帰はついに果たせなかったが、6月には音楽葬が行われ、4万人を超えるファンがその死を悼んだ。そして、9月には東京と大阪で追悼ライブが開催され、こちらも急きょ、座席数を拡張するほどの動員を記録。そして現在も、また坂井さんの楽曲に大きな注目が集まっている。
最期まで生きる希望を失わなかった坂井さんの歌声は「永遠」に、人々の心を癒やし、そして、励まし続けるのである。
(露口正義)