映画監督・ライターの杉作J太郎氏は、何度も取材を重ねた俳優・梅宮辰夫の魅力をこう語った。
「一見サラッと軽い印象ですけれど、スターとしての誇りと自負を誰よりも強く抱えている人でしたね」
〈広島極道はイモかもしれんが、旅の風下に立ったことは一遍もないんでぇ〉
凄む武田明役の小林旭に神戸の顔役・岩井信一に扮した梅宮が切り返す。
〈よおし、おんどれらも吐いたツバ飲まんとけよ〉
実録映画の傑作「仁義なき戦い 頂上作戦」(74年、東映)で見せた、シリーズ屈指の緊迫した場面だ。
ここで岩井に扮した梅宮は、両のマユを切り落とした異様な姿で、迫力を倍増させている。
演じた岩井のモデルは、三代目山口組若頭で、山建組の山本健一組長(82年没)で、梅宮とは浅からぬ因縁があったと明かした。
「若い頃は歌でキャバレー営業をこなして、神戸の店に出ていたら若いヤクザに『親分に挨拶がない』って怒鳴られてね。連れて行かされた先にいたのが山建さん。何のことかわからなかったが頭を下げたら、そこからはかわいがってもらえた。岩井の役をやることになったら、組の若頭に『しっかりやってくれよ』と激励もされたよ」
マユを剃り落としたのも、組長の風貌に合わせてのこと。梅宮は「今の時代は問題あるかも」と前置きしながら、きっぱりと言った。
「ヤクザの役を演じるんだったら同じメシを食い、同じ酒を飲み、時には一緒にソープに行くような…そんな“匂い”を吸収することも大事だったんだよ」
12月17日発売の週刊アサヒ芸能12月26号の緊急記事では、さらに名うてのプレイボーイとして鳴らした梅宮の秘話、また様々なパブリックイメージの下に隠された素顔へと肉薄していく。