一方、投手としての評価はどうか。5月23日のヤクルト戦でプロ初先発デビューを果たしたものの、5回2失点で、勝ち星にはつながらず。しかし、最速157キロという豪速球は、“投手・大谷”の印象を大きくアピールした。
元阪神のエースとして活躍した江本孟紀氏は、「藤浪よりも上」とピッチャー大谷を高く評価する。
「僕は大谷のストレートは、阪神の藤浪よりも球筋がいいと見ています。藤浪のシュート回転する球は、今後、崩れる可能性がある。大谷の重い160キロクラスの直球は天性のものですよ。ダルビッシュレベルのスケール感があります」
さらに前出・伊原氏に至っては、大谷の持つ投手としてのポテンシャルの高さに絶賛を惜しまない。
「ピッチャーの球速は、155キロまでは努力で出せても、それ以上は持って生まれた才能がなければ、とても出せません。今のストレートとスライダーに、縦のカーブやフォークが加わり、しっかり鍛えれば、5年後には15勝以上をあげる投手になっているはずです」
このままいけば、二刀流も夢ではなさそうだが、投手と打者の両立というのは、プロ野球の歴史を振り返っても前例のない前人未到の領域と言えるだけに、プロ野球OBを中心に批判的な意見が多いのも無理はない。前出・江本氏もこう代弁する。
「確かに二刀流は、漫画の世界です。ファンなら言ってもいいが、物理的にどだい無理な話。もともと、プロになるような選手は、アマチュア時代にエースで4番だったケースが多い。もちろんプロの世界でも、二刀流をやることはできますが、結果が残せないから誰もやっていないのが現実。どちらかに専念すればトップになれる可能性が高いのに、あえて二刀流に挑み、両方とも十傑に入れなくなるのは忍びない。大谷の場合も、本来なら対戦する先輩選手たちがプロの厳しさを身をもって教えてやらなくちゃ。大谷に打たれるわ、抑えられるわでは、大谷自身もふんぎりがつかないでしょう。まあ、それができるのも逸材たるゆえんですが‥‥」
プロ野球には「ファンに夢を与える」側面があるのも事実。しかし、長年の指導者の経験から「二刀流は難しい」と解説するのは、前出の伊原氏だ。
「先発ローテーションに入って週1回登板して、投手に必要な下半身の強化をしながら、野手の練習をこなす。そのうえで、スタメンで出場して、結果を残したらスーパーマンです。投げて15勝、打って3割20本というのは、まさに漫画の中の話。二刀流の場合、中継ぎやクローザーは、物理的に不可能。野手として出場したら、ブルペンでの調整ができませんから。そうなると選択肢は先発投手しかない。しかし、ローテに入っても、常に大谷の調子や疲れを見ながらになるのであれば、チームもうまく回転しないでしょう」