成長著しい期待の星が丸佳浩に弟子入りした。丸の自主トレに帯同したのは、2年目の山下航汰外野手。育成1年目で異例の支配下選手登録を勝ち取り、昨年イースタンリーグの首位打者にも輝いた逸材。その山下が丸との自主トレでどうしても習得したいと語っていたのが、「メモの取り方」だ。
丸といえば、対戦投手の球種などを試合中も事細かにメモすることで有名だが、山下は「どんなことをメモしているのか」「どういうことを書けばいいのか」と質問。当たり前のような質問にも聞こえるが、実は、この質問は意義深いという。
「丸はA6ほどの手帳を使い、ストライクゾーンを9分割した面に配球を書いています。カーブ、スライダーなどの変化球は同じ球種でも投げる人によって曲がり幅が微妙に異なります。そういう違いを丸は、『感じたこと』として言葉で書き込んでいるんです」(スポーツ紙記者)
しかし、それだけなら、メモにたいした意味はない。敏腕のスコアラーは巨人を始め全球団にいる。彼らが作成した対戦投手に関するチャート表が試合前に配布されているので、わざわざメモを取る必要はないはずだ。しかし、丸のメモには、投げる人によって微妙に異なる変化球のことも書いてあるうえに、次対戦に向け、「この球種を決め球に使ってくるのではないか?」という予想も書かれているそうだ。
少し乱暴な言い方になるが、空想上での対戦シミュレーションもされているのだ。スコアラーのからの通達ではなく、自分の言葉にすることも大切だが、データを単にインプットするだけではなく、自分なりにアウトプットすることに重きを置いたメモでもあるようだ。
そして丸がもっともコト細かにメモを取るのはリリーフ投手に対してだという。先発投手は1試合に3、4回の対戦があるが、リリーバーとは1回あるかないか…。その1度の勝負に打てるかどうかで、チームの勝敗も決まってくるからだ。もちろんメモの通りにならなかったこともあるだろうが、メモを取ることで確実に蓄積されていくこともある、というわけである。
今年、山下がブレイクしたら、巨人ベンチはグラウンドではなく、みんな下を向いてペンを走らせているかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)