ヤードの出現に合わせるかのように、ブラック通り付近では昨年来、車の盗難が相次いでいるという。
今年1月に4トンクレーン車を盗まれたという建設会社社長が憤る。
「夜のうちに持っていかれました。自宅から少し距離のある場所に止めていたので、物音などにも気づきませんでした。すぐに警察に被害届は出しましたが、いまだに連絡はありません。ウチのような個人経営の会社では、すぐに代わりのクレーン車を用意する余裕はない。実質、失業状態ですよ‥‥」
のぞき込んだヤード内の光景がよみがえってきた。
X氏が、ヤード内で行われている犯罪の全貌を解説する。
「ヤード内の作業は昼夜問わず行われているね。深夜に盗難車を中に運び込んで、犯罪がバレないうちにすぐ車体番号を削って、解体しちゃうんだ。夜中にガチャガチャ、カンカンと音が響くから、近くに民家があるようなヤードは通報されて摘発につながったケースもあるってね。昼間の作業? 昼間は正規の廃車オークションで買ってきたトラックなんかを解体してるんだ。20~30台で2万~3万円って額だよ。安く入手してきた廃車の部品が何倍もの額で高く売れる。これが“表の仕事”。ちゃんと建て前の仕事がないと怪しまれるからな」
安く仕入れて高く売る。盗難車なら、それこそ原価はタダだ。
先にも触れたとおり、黒人が経営するヤードと日本人窃盗グループは密接につながっているようだ。
ヤード側が窃盗グループ団に台数や車種、買い取り金額を明示して発注。窃盗グループはそれに合わせて調達し、ヤードに届けるというのである。
「窃盗団に暴力団が関わっているケースも少なくないね。元手がかからないし、すぐに現金化できるのが魅力なんだよ。高級車で10万~15万円。トラックはピンキリで5万~30万円。クレーン車なんかの重機は50万~60万円が相場だって。ヤード側も、安い買い取り金額の3~10倍で輸出できる。まさにウィンウィンの関係になってるんだ。盗みを働くヤクザの若いのも、当初の見込みの金額に達しないと『朝方までにもう1台盗んでくる』なんて張り切って出て行くってな」(前出・X氏)
日本人が許可を取ったヤードを外国人に貸し出す“名義貸し”も横行しているという。
ところで、日本で不良外国人が暗躍しているニュースは昨今、珍しくもないが、この犯罪に限ってアフリカ系の黒人が中心となっているのには理由があるようだ。
それは盗難車の需要である。盗まれた車が密輸される先は、中東やアフリカなどだという。
「そういった国は砂漠なんかの悪路で車の傷みが早いんだってな。それで、耐久性に優れた日本車人気が高いから、高値で取り引きされているんだよ」(前出・X氏)
都内の中古車輸出業者が補足する。
「中東のドバイには世界最大の中古車市場があります。販売業者の多くはイスラム教徒でありながら英語も堪能。その強みを生かして、日本の中古車を世界各地に輸出しているんです」
日本で盗まれ解体された盗難車がドバイの工場で組み直され、普通の中古車としてアフリカ諸国に流通していくのだという。