テレビ局の「コロナパニック」は、もはや現場崩壊の危機に直面しつつある。中でもバラエティー番組は死に体の様相だ。
コロナパニックがいよいよ深刻化しているテレビ業界。3月29日にはお笑い界の重鎮・志村けんの死去という「志村ショック」でテレビ局は震え上がった。今や「労働集約産業」のテレビの現場は大きな岐路に立たされているのだ。東京キー局の関係者が言う。
「局への入館者は、24時間体制で局員、タレントを問わず入り口で検温が義務づけられ、37.3度あると立ち入ることができません。それだけでなく、サーモグラフィーで全身の発熱状況まで確認する徹底ぶりです。現在、局員から感染者が出た日本テレビ、TBS、テレビ東京は、報道や情報番組以外の局内スタジオの使用が禁じられており、他局もそれに追随する動きを見せています」
そこで最もワリを食っているのが、「不要不急」の最たるものと言えるバラエティー番組だ。一番の問題は、現状、新たに収録ができなくなっていることだという。
「緊急事態宣言が発令され、屋外ロケが事実上不可能になりました。局外の大型スタジオはまだ機能していますが、『じゃあ、何を録るんだ』という話になる。大人数のタレントを並べたヒナ壇番組なんかはもってのほかですから」(前出・キー局関係者)
また、別のキー局の編成担当者もこう嘆くばかり。
「収録済みの番組ストックもあるにはありますが、それだって、もって4月いっぱい。現状、可能なかぎり録りだめを進めていますが、局スタジオ使用不可の状況で、当初の想定よりもかなり遅れています」
東京五輪延期で各局ともに穴埋めに奔走していた中での状況悪化とあって、混乱に拍車がかかっている。しかも、さらに深刻な事態が同時進行で勃発していた。
テレビの制作現場では局の社員を頂点にしたヒエラルキーが厳然として存在している。そうした中、3次請けや4次請けが現場を担当。ところが、すでに各局では立場の弱い下請けスタッフの「大リストラ」が始まっているのだ。バラエティー番組にカメラクルーを派遣する制作会社の代表が青息吐息で語る。
「今後の撮影スケジュールが完全白紙になりました。私たちのような1現場いくらの会社にとって、今の状況は死刑宣告に等しい。業界の慣習で、撮影した番組へのギャラが支払われるのはオンエア成立後なのですが、改編期の4月に放送予定だった特番や新番組も、そのままお蔵入りになってしまう可能性があり、ノーギャラかもしれないのです。時間差で振り込まれる4月までの収入は確保できていますが‥‥。はっきり言って会社は倒産の危機。同じような状況の同業者はいくらでもいます」
つまり4月以降、体力のない下請けやフリーの技術職スタッフの「連鎖倒産」が起きかねない状況なのだ。
もちろん、悪影響は裏方だけにとどまらない。芸能関係者が声を潜める。
「今、かなりヤバいと言われているのが、お笑いタレントを6000人抱える吉本興業。バラエティー激減でギャラ収入が少ないこともありますが、全国に抱える劇場が一切稼働できないことのほうが危険。それぞれに人件費や維持費もかかりますからね。ですが、森三中の黒沢かずこのように感染者を身内から出したことで、業界内でも先頭を切ってコロナ対策を講じなければいけない立場になった。今後、テレビ局ではスポンサー離れからの制作費減が予想されますが、お笑い番組の消滅すら起きかねない中、高額ギャラのベテラン芸人が切られることもありえます」
業界を急襲した「4月危機」をテレビ界一体となって乗り越えないかぎり、娯楽文化の灯が消えてしまいかねない。