2019年のM-1グランプリの決勝で3位に入り、一躍ブレイクを果たしたお笑いコンビの「ぺこぱ」。シュウペイの天然とも思える小ボケに、「ツッコまないツッコミの松陰寺太勇の漫才スタイルは斬新で、「時を戻そう」「悪くないだろう」などのフレーズは今年の流行語大賞も狙えるのではないかというほどお茶の間に浸透している。
そんなぺこぱが、みずからのYouTubeチャンネル〈ぺこぱチャンネル〉で、4月22日に〈全力下り坂〉を投稿。16年1月17日に下北沢の「しもきた空間リバティ」で開催された2人の初単独ライブ「風~KAZE~」の幕間に投影された映像「全力下り坂」が紹介された。
女性アイドルが胸を揺らして坂を駆け上がるバラエティ番組「全力坂」(テレビ朝日系)のパロディのような内容で、ド派手なメイクに赤い着物を着た松陰寺が〈表参道のどこかにあるという坂〉をキザなポーズを決めながらローラースケートで滑り降りるといった内容だった。当時はほぼ無名だった松陰寺。ハデな着物姿にもかかわらず、すれ違う人が見返りもせず、我関せずといったシュールな光景は笑いを誘った。
単独ライブのチケットは完売で、ブレイクの兆しを見せていたわけだが、当時の彼らの記事には、〈着物にローラーシューズというキザ芸人・松陰寺太勇〉と紹介されていた。また、相方は〈そんな松陰寺に振り回されながらも鋭いツッコミを入れ続けるシュウペイ〉とあり、M‐1の快進撃から知った我々の知るぺこぱではないことがわかった。
現在、ホストのようなスーツ姿の松陰寺がキザ芸人というのは延長線上でわからなくもないが、シュウペイが鋭いツッコミというのは、いくらなんでも乖離している思いがある。しかし、「ボクが結構ぺこぱ先行しがちですけど、ぺこぱの奥コイツですよ」と松陰寺が相方の才能を、カジサックのYouTubeチャンネルで評したことがある。
かつて、お笑いコンビのくりぃむしちゅーが若かりし「海砂利水魚」時代に上田晋也と有田哲平のボケとツッコミが逆であったように、ぺこぱにも現スタイルを築くまでに並々ならぬ苦労があったことがうかがえる。
さすがに松陰寺も今は、「時を戻そう」とは思わないだろう。
(ユーチューブライター・所ひで)