梅雨明けを前にして今週から新潟、札幌が開幕。本格的な夏のローカル戦に突入するが、その開幕週のメインは新潟競馬名物、直線のみの芝1000メートル戦、アイビスサマーダッシュだ。
最有力候補は、むろんのこと昨年の覇者ライオンボスである。とにかく典型的なスプリンターで、この5ハロン戦のスペシャリスト。通常スプリント戦といえば6ハロン(1200メートル)での競馬だが、同馬はダートも含めて勝ち鞍(6勝)全てが5ハロン戦。そのスピードは非凡と言っていい。
なので前走、同じ舞台で行われた韋駄天Sを勝ったあとは、よそ見をせずに短期放牧でリフレッシュ。ここを目標にしっかりと調整されてきており、仕上げにまったく抜かりがない。ならば連覇もそう難しくないとみられて当然だろう。
しかし今回は顔ぶれもなかなかで、新興勢も少なくない。さらに、獲得賞金から他馬より背負う斤量(57キロ)も気になるし、ハナを切って押し切りたい同型脚質の馬も多くいる。今回は王者にとって厳しい競馬が待っており、全幅の信頼を寄せていいものか、微妙なところだ。
アユツリオヤジ、カッパツハッチ、ゴールドクイーン、ジョーカナチャン、ダイメイプリンセス、ビリーバー、ペイシャドリーム、そしてCBC賞を勝ち、復活なったラブカンプーといったところが「ライオンボス包囲網」だが、どの馬もスピード自慢で色気たっぷり。人気どおり簡単には決まりそうにないのだ。
過去19回で1番人気馬は8勝(2着3回)、2番人気馬は3勝(2着3回)。1、2番人気馬でのワンツー決着は3回のみ。しかも馬単導入後、これまでの18年間、その馬単での万馬券は6回(馬連では1回)あり、データからも本命サイドの堅い決着にはなっていない。
そして夏といえば牝馬である。暑さに強いとされているからで、この重賞は、とにかく牝馬の活躍が目立つ。過去19回で牝馬が12勝(2着9回)、牡馬は7勝(2着10回)。全体的に牡馬の出走頭数が多いことを思えば、「牝馬優位」は特筆していいだろう。
今年も多彩な顔ぶれで目移りしてしまうが、穴党として最も期待を寄せたいのはその牝馬、クールティアラである。
矢野厩舎は同馬とカッパツハッチの2頭出し。ライオンボスと2度接戦を演じたことのあるカッパツハッチに、より脈があるとみられて当然だが、軽視は禁物と言っておこう。
前走の韋駄天Sは6着。それ以来のレースになるが、この馬も短期放牧を挟んでここを目標に丹念に乗り込まれ、万全の出走態勢を敷いている。1週前の追い切りも軽快かつリズミカル。まずは文句のない動きだった。
「重めだった体が締まって実にいい雰囲気。これまでとは違うよ」
こう矢野調教師が目を細めて仕上がりのよさを強調するように、それまでの前2走は馬体に余裕があり、重め残りの状態だった。それでも韋駄天Sでは勝ったライオンボスにコンマ5秒差と、しぶとく食らいついていたのだ。
牝馬は暑さに強いと書いたが、この馬も汗をかく夏場に調子を上げるタイプ。それは素軽い稽古内容からも明らかで、今回はまさに満を持しての出走と言っていいだろう。
父アルデバランIIは、北米のチャンピオン・スプリンター。そしてクールティアラ自身は、あの名種牡馬ミスタープロスペクターの2×4という近親配合馬。母系も欧州の一流血脈で、血統的にみても「一発」があっていい。