いよいよ、今月22日の放送で最終回を迎える日曜劇場「半沢直樹」。主演の堺雅人の決めゼリフ「やられたらやり返す。倍返しだ!」は痛快そのものだが、ドラマ以上に原作は冷血さに満ちて息を飲むほど。売られたケンカを買い、10倍返しどころか、潰すまで戦う。それがもう一人の半沢直樹だった。
大手都市銀行に恨みを持ちながら入行し、頭取の座を目指す、堺雅人主演のドラマ「半沢直樹」(TBS系)。7月の初回放送から視聴率を上げ続け、2週連続の30%オーバーは、キムタク主演の「GOOD LUCK!!」(03年)以来の快挙。あの「家政婦のミタ」(11年)が記録した40%超えを狙うほどの人気ぶりだ。
計画倒産の陰謀に巻き込まれ四面楚歌の中で5億円の債権回収に挑む「大阪篇」では、ドラマ第5話で黒幕の浅野支店長(石丸幹二)をとことん追い込む。例えば、このシーンを原作の「オレたちバブル入行組」(作・池井戸潤)で振り返ると、「原作の半沢」の冷徹ぶりが浮き彫りになるのだ。
〈「オレは基本的に性善説だ。相手が善意であり、好意を見せるのであれば、誠心誠意それに応える。だが、やられたらやり返す。泣き寝入りはしない。そして──潰す。二度と這い上がれないように。浅野にそれを思い知らせてやる」〉
ドラマではピンチの連続の半沢を支える同期の渡真利(及川光博)でさえ原作では、獲物を追い立てて憎悪をにじませたセリフを吐く半沢を見る目に恐怖を浮かべる。スポーツ紙記者が話す。
「半沢の冷淡さなら、ドラマより原作のほうが強烈ですね。序章で『半沢は気取ったヤツが嫌いだった。お上品や育ちのよさをぷんぷんさせているようなヤツはもっと嫌いだ!』とあるだけに、表向きはスマートな浅野支店長への憎悪は激しく、ドラマでは1回だった土下座も2度もさせて、『お前など銀行員のクズだ。破滅させてやる』と、冷酷な言葉を浴びせています」
ドラマでは、5億円の融資後に計画倒産した社長の愛人役として登場する壇蜜もキーマンだが、社長とは別の壇蜜の「男」を冷徹に締め上げ、隠し口座の情報を手に入れる。
そんな悪党退治ぶりは、巨額損失に揺れる老舗ホテルの再建を押しつけられた「東京篇」でも同じだ。
「原作の半沢は、常に冷静に対立者の弱点を突き、高圧的に威嚇し、攻める。もちろん、肩書頼りの小者タイプにも容赦ない。行内の対立派が隠そうとする報告書を入手するシーンでも、古里融資課課長代理(手塚とおる)にトラップを仕掛けて追い込み、ドラマでは金庫破り、原作では貝瀬支店長宅から目的の証拠を手に入れます」(前出・スポーツ紙記者)
◆アサヒ芸能9/17発売(9/26号)より