胃がキリキリ痛んだり、すぐに満腹になるので、病院で内視鏡検査をしたところ、まったく「異常なし」。こう言われた人は、近年増えている「機能性ディスペプシア(FD)」かもしれない。
聞きなれない病気だが、「ディスペプシア」とは「胃や十二指腸から生じるさまざまな症状」を発症する病気。胃の不調で内視鏡検査などで調べても、胃ガンや胃潰瘍などの異常がないにもかかわらず、慢性的にみぞおちの痛みや胃もたれなどの症状がある場合、「FD」と診断される。
以前は「気のせい」と言われたり、「慢性胃炎」と正反対の診断をされたりしてきたが、最近の研究ではまったく異なった病気であることが明らかになっている。健康診断を受けた人の11~17%、病院検査では44~53%もの人に「FD」が見つかるという報告もある。
典型的な症状は、膨腹感や食後の胃もたれ、胃痛や灼熱感などだ。
原因は、ストレスや睡眠不足、不規則な食事、喫煙などによる自律神経の乱れが指摘されている。また、胃酸の刺激に対して、胃や十二指腸が過敏になり、胃痛を引き起こしているとも考えられる。
「FD」と診断された場合には、胃酸の分泌を抑える薬や、胃の運動機能を改善する薬、漢方薬などが処方される。ストレスが原因の場合は、抗不安薬や抗うつ薬を使用する場合もある。また、胃の粘膜にピロリ菌がいる人の場合、除菌することでFDの症状が改善することも。
2013年からは保険治療できるようになった。この場合、ディスペプシア症状が、1週間に2~3回以上起こる状態が1カ月以上慢性的に続いていることが目安になる。
「FD」のつらい症状をただ我慢している人も多数いる。自身の症状が当てはまる場合には一度、医療機関を受診することをお勧めしたい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。