お尻から足元にかけてズーンとくる痛みや痺れを感じたら「坐骨神経痛」かもしれない。
これは坐骨神経に沿って起こる痛みや痺れの症状のこと。坐骨神経は、坐骨を通り、お尻の筋肉の梨状筋を抜けて足へ向かう末梢神経のひとつで、人によって痛みが出る場所や症状も異なり、冷え性やこむら返り、頻尿や尿失禁などの症状を伴うケースもある。
「ぎっくり腰」と勘違いをする人もいるが、これは重い荷物などを急に持ち上げたりするなど、突発的な動作をきっかけに発症することが知られ、「坐骨神経痛」は、特に思い当たるきっかけがなく、突然痛くなる場合が多い。
発症原因として多くを占めるのが、「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」だ。これは50代以上の中高年に多い。主に加齢によって背骨が変形したり、靱帯が厚くなったりすることで、背骨の後ろ側にある神経の通る管(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されることが原因となる。
「坐骨神経痛」の症状がある場合は、レントゲンやMRIなどで診断し、椎間板や神経の状態などの詳細を調べる。治療は、神経の血流を改善する血管拡張薬や消炎鎮痛薬、神経ブロック、患部への局所麻酔薬やステロイドのブロック注射を行う場合もある。症状によっては、体幹部トレーニングや下肢のストレッチ、ラジオ体操を勧める医師もいる。重症の場合は、手術を検討する場合もあるので注意が必要だ。
「坐骨神経痛」は、長時間、同じ姿勢でいることで発症することが多い。予防策は、足を組まずに座り、均一にお尻に負荷がかかる姿勢で座ることだ。長時間のデスクワークの人は、スタンディングワークに変えることも有効だ。腰・足の冷えも、悪化要因になるため、薄手の上着などで冷房対策にも努めたい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。