投手起用でも同じです。しつこいようですが、CS2戦目は何が何でも勝たなければいけない試合。それにもかかわらず、首脳陣はエースである能見篤史を投げさせなかった。もし彼の肩が悪かったのであれば、チームはもっと投手スクランブルをかけるべきだった。メッセンジャーが打たれるのであれば、防御率を考慮しても後続はボイヤーや安藤優也ではなく福原忍。そこからスタンリッジをスタンバイさせるのが先決。あの投手リレーを見ると負けられないというチームの気迫がまったく感じられませんでした。ファンの方々から非難をいただいてもしかたのない内容。これもひとえに勝たなければいけないという危機感のなさが引き金になっています。
マスコミへの対応一つ取ってもそうですね。CSであれほどファンを悲しませる試合を見せながらも、チームは僕の名前を発表し、敗者という烙印から逃げ出した。選手たちもCS敗退という事実を直視せずにキャンプに入ってしまうかもしれない。今回のように新聞が取り上げないからといって、球団全体が今年の敗北に真っ正面から向き合わなければ、結局はチーム内の危機感のなさは治らないでしょう。
もちろん、技術面での課題も山積みです。今季の阪神の野手陣は、ボールの見極めがまったくといっていいほどできていなかった。そのせいで打線は速いボールに差し込まれ、変化球にもうまく合わせられなかった。
では、どうして阪神の選手はボールの見極めができていなかったのか。これはスイングをしっかりとレベルに振れていないから。
今シーズンの阪神のほとんどの選手は、レベルスイングをしようとしても、スイングの際に後ろの肩が無意識に下がってしまっていました。そうなるとバット自体が下がってしまい、スイングもダウン気味になってしまいます。結果、ボールを芯で捉えられなくなる。タイミングが合ってもファウルなどの打ち損じばかりが増え、速球には対応できないという事態に陥ってしまっていたのです。
しかしながら、阪神打線が貧打と呼ばれる理由は他にあります。それがつながりの悪さです。これは巨人と比較すると非常にわかりやすい。阪神の今シーズンのチーム打率は2割5分5厘。対する巨人は2割6分2厘。両チームにそこまで大きな違いはありません。問題はそのヒットをいかに得点に結び付けているかなのです。
巨人は今季、阿部慎之助、村田修一という柱を中心に坂本、長野という試合経験の豊富な選手を組み合わせた、非常にバランスの取れた打線で勝負をしていました。中でも阿部は、不調でも3割30本を打てる打者。村田も得点圏打率はチームトップの選手です。オーダーもホームラン打者である阿部を中心として組み立てられ、前後のメンバーを入れ替えても、この2人がいるおかげで得点パターンを変える必要がなかった。
さらに後半戦では3番に阿部、4番に村田と主軸の入れ替えを行い、村田のプレッシャーを使って相手投手が阿部と勝負しなければいけないシチュエーションを完成させたのはみごと。3番阿部という仕掛けの早い打順で得点を稼ぎ、7、8、9回を投手力で抑えるという方法で、巨人は圧倒的な力を見せつけてリーグ優勝を勝ち取ったのです。