阪神にはチームを背負えるホームラン打者が1人もいません。得点力で阿部と比べても、4番のマートンでは打者としてはあまりにも細すぎます。
実際、3番である鳥谷のフォアボール数はシーズンを通しても一向に減る気配がなかった。これは相手バッテリーがマートンの前にランナーを出すことに不安を感じていないという証拠でもあるのです。
そのうえで和田監督は打順を後半から巨人の阿部、村田のように3番鳥谷と4番マートンをコンバート。けれど、鳥谷の得点圏打率は2割5分6厘と、マートンの2割8分5厘よりもずいぶんと下。3番であるマートンが出塁したところで得点に変える確率は初めの打線よりも低いわけです。
この2人のバットで得点に結び付けたいなら、鳥谷のフォアボール数を抑えることが最善。そうすればマートンとの勝負の期待も広がり、鳥谷自身も4番に座ることが可能になってくる。その手順を踏む前に、打順の入れ替えはありえなかったのです。
加えて、今年は4番候補であった新井兄弟も課題を残したまま終わってしまった残念な年。今季の試合を見れば、新井貴浩が今後4番に戻ることはまずないでしょう。6番、7番であれば打率的にも合格ラインではあるけれど、4番にはふさわしくない。そもそも本人から4番を打ちたいという気持ちそのものが伝わってきませんでした。
良太は貴浩よりも打撃面での問題が多い選手。彼はとにかく初球から振っていくタイプ。なりふりかまわず振っていき、全てのボールに手を出して、最後はボール球を振って三振、または凡打。1年を通して同じパターンというのは打者として失格です。たまに出るホームランもピッチャー本人も予期せぬコースに行った球を捉えただけの意外性のあるものです。チームが欲しいのは確実性。今後、良太はもっと状況判断をしながら、狙い球をしぼる必要があるでしょう。
そういったシーズンを送ってしまったという意味でも、僕はポストシーズンのあり方をもう一度考え直すことが必要だと思います。
現在、契約期間外である12月から1月までの2カ月間は、コーチが選手を指導することができません。けれど、若手にとってみればこの2カ月間が何よりも勝負の時期。フルシーズン戦ったベテラン勢は自主練習という形でも問題ないですが、二軍の若手選手はまだまだ体力も残っている。僕も現役の頃はこの2カ月間に練習し、体を大きくした経験があります。1月のキャンプ入りの時には体が完全に出来上がっていたものですが、今はその指導すらできない状況です。ここは一度、選手会で話し合い、強制と言わずとも志望者にはポストシーズンでの1対1でのコーチの指導を許可するべきなのです。
阪神改革の第一歩は、まさにこれから始まるオフシーズンの改善にこそあるのではないでしょうか。