さらに不可解なのが、こうした「単勝>3連単」という「異常オッズ」が、金沢競馬では過去にも起きている点だ。中でもひときわ異彩を放っているのが、今年5月14日の3レース。最終的な払戻が表1、出走馬の人気オッズが表2だ。このレースでは、7番人気の【1】が勝ち、2着は断然人気の【3】、3着が6番人気の【6】で、3連単【1】【3】【6】は4540円で決まった。ところが、ワイドの【1】─【6】が1860円ながら、枠単940円、3連複910円だったのだ。スポーツ紙記者はこの結果に首をかしげる。
「的中がより難しい馬券になれば、通常は払戻金が高くなる。ところが、その逆ですからね。どう見ても締め切り直前に、枠単や3連複、3連単だけに投票が集中したんでしょうね。そのため、大きなオッズの変化に誰も気づかず、おいしい配当の単勝やワイドが売れ残ってしまった。中央競馬に比べて売上額が少ないため、1万円単位で大きく変動することが予想できます、さらに人気の3連単に約6割(JRAでは平均で約4割のシェア)もの投票が集中した結果と見られている」
実際、JRAではこうした「馬単>3連単」が起こっているのだろうか。JRAの検索機能サービスで3連単スタート以降の全レースをチェックしてみても、1度もないことが一目瞭然だった。
また、「ワイド>3連複」についても、10年以降で調べてみたところ、5レースがヒット。ただし、その差額は10円が3レースで、残りも20円と80円。金沢競馬場のような950円もの差のつくような払戻はなかった。
ならば、地方競馬はどうか。調べようにも、JRAのようなサービスがない。そこで、地方競馬全体を管理、統治する地方競馬全国協会(NAR)に、「馬単>3連単」が起きていることの感想および、過去の事例を問うと、
「お答えする事案ではないので、各競馬場に聞いてください」
と、つれない返事。
そこで、金沢競馬場に「異常オッズ」について尋ねたところ、
「すぐに過去の例をお伝えできませんが、時間をいただければ調べさせていただきます」
と、木で鼻をくくった答え。5月に起きたレース結果にもかかわらずこの返答であれば、地方競馬と中央競馬ではレースもサービス内容も、まったく別モノに映るばかりだ。これでは交流レースでしか、中央競馬に慣れ親しんだファンは楽しめそうにない。