元衆院議員の宮崎謙介氏が足掛け5年の議員生活の経験をもとに、政治家ウオッチングやオフレコ話、政治にまつわる話を適度な塩梅で、わかりやすく「濃口政治評論家」として直言!
僕が見た官邸は、世論からとてもかけ離れていました。まさに「ビートルズはテレビの中♪」というレベルです。西村大臣の例でも、もうお分かりでしょう。飲食店を経営して困ったこともなければ、そもそもお金を借りるという感覚はゼロ。お金は生まれながらにして死ぬほどある、という大臣には、多くの庶民の人生は理解できません。
ということを感じていた最中、元官僚でテレビコメンテーターとして活躍する岸博幸氏を内閣官房参与にすると政権が発表。菅総理は今の政権の中でもわりと庶民感覚に近いのですが‥‥おおっと! いくら大ピンチとはいえ、岸さんが内閣参与ですか。ここには少しズレを感じます。
「もっと国民感情に近いブレーンが欲しい。そうか、テレビで庶民の味方になっている岸さんを近くに置こう!」
という策略でしょうか。ちょっと短絡的とも捉えられませんか。
岸さんといえば、僕はあらゆる場面でご一緒する機会が多く、討論番組で共演したこともあります。多くかぶるのは「サンジャポ」ですが、同じ政治枠なので、スタジオで一緒になることはほぼありません。が、僕のことを「めちゃくちゃ嫌いなんですよね」と、とある番組で吐露しているのを見ました。そんなある日、表参道のヘアサロンでバッタリ。
「あー、どうもどうも。宮崎さん、いつも応援してますよ」
会えばなんと感じのいいこと。あの「7:3スタイル」が表参道発信だったとは驚きです。
という雑談はさておき、対面するとスッカリほだされてしまいます。ああ見えて、人との距離を詰めるのが得意な人で、元官僚の中でもピカイチ。飲みに誘われたら絶対に断らない(こんな人、他にもいましたが)的な、出世コース間違いなしの優秀な人です。
さらに、岸さんとは昨年秋にもバッタリ出くわしています。場所は永田町、ザ・キャピトルホテル東急のラウンジ。菅総理と岸さんがお茶をしている肝心の場面です。コロナ禍ということもありましたが、昼時なのにお食事はせず、たくさんの書類をテーブル上に広げ、顔を突き合わせている異色な二人。「ん? これは怪しい」と感じたものの、そのままやり過ごしてしまいました。あの時、「アサ芸」に報告していたら、暗躍の走りくらいは掴んでいたのかもしれません。
でも結局は、大した話ではないんです。「この決定には竹中平蔵氏が関与した可能性も」という報道も読みましたが、菅内閣の一角を担っていた小此木さんが急に辞め、もはやお友達の少ない菅総理。残り少ない友達のデービッド・アトキンソンか岸さんか‥‥に頼るしかなくなったのでは、と思います。
「支持率は下落、もはやレームダック」とまでメディアに揶揄され、さらに西村大臣の失点で内閣は大ピンチ。岸さんが内閣官房参与として入ることによって、菅総理の断末魔の叫びが大きな幸せの歌へとつながるとは思えません。
ちなみに、デーブ・スペクターさんは「岸さんと親友になっておけばよかった」と嘆いていました(笑)。岸さん、僕ともまたどこかでお会いしましょう。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ):1981年生まれ、東京都出身。早稲田大学を卒業後、日本生命などを経て12年に国会議員に。16年に辞職し、経営コンサルタント。6月30日に著書「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」(徳間書店)を上梓。