秋の中山、中京競馬は3週目に入る。中山の産経賞オールカマーは、勝ち馬に天皇賞・秋、中京の神戸新聞杯は1~3着馬に菊花賞の優先出走権が与えられるトライアルレースである。それだけに両重賞とも顔ぶれのいい前哨戦となった。
オールカマーは、2週後に行われる毎日王冠に比べると少々顔ぶれは見劣るが、それでも女傑レイパパレ(大阪杯)、グローリーヴェイズ(香港ヴァーズ)と2頭のGI馬が出走してくる。一方の神戸新聞杯は、ダービー1、3着馬のシャフリヤール、ステラヴェローチェが秋のスタートへ満を持しており、ともにファン必見で、見応えある熱戦が期待できそうだ。
ただ、馬券的にはオールカマーのほうがおもしろそうである。1955年の創設当初はその名が示すとおり、何でもいらっしゃいというハンデ戦。よく荒れる重賞で知られたが、1995年から別定戦による現在の条件に定着してからは、盾の前哨戦だけあり、比較的順調な結着をみるようになった。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの19年間、その馬単での万馬券は3回(馬連は0回)。この間、1番人気馬は6勝(2着4回)、2番人気馬は3勝(2着4回)。ただ、1、2番人気馬同士のワンツー決着は皆無なので、やみくもに人気、有力馬どころへ目を向けるのは避けるべきだ。
年齢的には充実著しい5歳馬が7勝(2着8回)とよく連対しており、それに続くのが6歳馬の5勝(2着5回)、4歳馬の4勝(2着6回)とほぼ同等。近年は牝馬の活躍が目立つようになっているため、その意味ではレイパパレ以下、今年も要注意である。
とはいえ、穴党として最も期待したいのは、過去19年間で一度も連対を果たしたことのない8歳馬、マウントゴールドである。
無謀な狙いとみられてもやむを得ないところだが、父ステイゴールド譲りの奥手で、ここにきて地力強化したのは見逃せない。
前走の七夕賞は、11番人気ながら見せ場たっぷりに勝ち馬とコンマ2秒差の4着。周囲を驚かせたが、前走後はここを目標に放牧でリフレッシュされ、みっちりと乗り込まれてきた。中間の稽古内容も実によく、好気配を誇っている。
「無理せず使ってきたことで、心身ともにたくましく成長してきた。ひと皮むけた印象さえある」
と、厩舎スタッフが口をそろえるほど。状態のよさは推して知るべしだろう。
先行力があり、スタミナを備えているこの馬にとって、中山のこの舞台は競馬がしやすいはず。クオリティロード(フロリダダービーなどGI4勝)、米3歳女王アジーナ(BCディスタフなどGI3勝)が近親にいる血筋も魅力。大駆けがあっても不思議はない。
一方の神戸新聞杯は、過去19年間で馬単万馬券がわずか1回(馬連0回)と、堅く収まる重賞である。
春のクラシック戦線で活躍した馬がそのまま上位争いを演じることが多いからだが、それでも狙ってみたいのは、格下とみられているイクスプロージョンだ。
現在2勝クラスだが、使われつつたくましく成長してきており、春のひ弱なイメージが消えている。前走の阿賀野川特別はひと息入ったあとで、前々走比プラス8キロと重め残りの状態。伸びきれず5着に終わったのは、そのためだ。
しかし、この中間は大幅良化。かなりいい仕上がり状態にある。左回りもスムーズで、中京コースは〈1 1 1 0〉と相性もいい。
父は3冠馬のオルフェーヴル。近親、一族にフサイチコンコルド(ダービー)、皐月賞を制したヴィクトリーやアンライバルドなどの活躍馬がキラ星のごとくいる良血。晴雨にかかわらずチャンスがあっていい。