1月10日スタートの月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系)のヒロイン役に抜擢された女優・伊藤沙莉。彼女の見る者を捉えて離さない存在感は、子役時代から培った18年という長い芸歴に裏打ちされている。
「デビューは03年のドラマ『14ヶ月~妻が子供に還っていく~』(日本テレビ系)なんですが、わずか9歳で『体が少女に若返った女性』という難役を務め上げました。同世代女優の中でも群を抜いて演技力が高いのです」(芸能記者)
その後、天海祐希主演のドラマ「女王の教室」(05年、日テレ系)に出演。主要キャストの志田未来をイジメる役どころだったが、これが好事家の目に留まった。コラムニストの吉田潮氏も、そんなひとりだ。
「個性的な声がインプットされてしまったんです。『このハスキーボイスの子は誰だ!?』と」
以降、娘や児童、生徒役などで着実に出演本数を重ねていくが、12年、所属事務所の処遇を巡り、女優引退の危機が訪れる。
「二階堂ふみや松岡茉優も出演した話題作『悪の教典』(12年、東宝)への出演が決まり、順調にキャリアを積んでいるという自負が生まれつつあった。そんな時、某映画の現場に行くと、なんとエキストラ役。しかも当時、同じ事務所の三浦透子が役名入りで現場にいる。そのことで事務所への不信感が芽生え、プライドも傷つけられた」(芸能記者)
さらに続けて「悪の教典」の撮影中、今度は事務所の「子役部門」が消失。その時のことを6月に発売されたエッセイ「【さり】ではなく【さいり】です。」(KADOKAWA)の中で、こう綴っている。
〈シンプルに事務所をクビになった。(中略)続けるか辞めるかの選択に迫られた〉
いわば初めて芸能界の荒波に揉まれ苦汁を味わったのだ。芸能記者が当時を振り返る。
「まだ10代の高校生で、大きな岐路に立たされたわけです。その後、いくつか受けた事務所は落ち、女優を諦めつつあった時、信頼できる元事務所関係者から今の事務所を紹介され『芝居ができればそれでいい』の一心で所属先が決まった」
それから1年ほど仕事のない時期を過ごし、久しぶりにレギュラー出演したのがドラマ「GTO」(14年、フジテレビ系)。ここで再び実力を発揮する。前出の吉田氏も「あっ、あの子だ!」と沸き立ったという。
「すぐに『女王の教室』のあの子だとわかりました。学生の集団の中で、ひとりだけ“プロ”というか、際立っていましたね。揉まれていい役者に成長したんだなぁと感慨深かったです」