仁川に桜が咲き誇り、春爛漫。競馬シーズンの到来で、その幕開けを告げるのが牝馬クラシック第一弾、桜花賞だ。
スピードと同時にその馬の資質が問われるGI戦で、3歳馬の評価、価値が決まる一戦でもある。
今年もフルゲート(18頭)必至とみられるが、年々サラブレッドの質が高くなってきており、いずれの馬が勝ち負けしてもおかしくない。それほど出走各馬の力量はハイレベルで拮抗しているように見える。
ファンも我々予想する者も悩ましいばかり。今年は本当に質の高い馬がそろっている。
阪神JFを制し、2歳女王に輝いたサークルオブライフ、チューリップ賞でその女王を負かしたナミュールを筆頭として、同レースの2着馬ピンハイ、エルフィンSを制したアルーリングウェイ、フィリーズRの1、2着馬サブライムアンセムとナムラクレア、クイーンC勝ちのプレサージュリフト、フェアリーSを制したライラックなど、目移りするばかりである。
むろん、これら以外の伏兵陣も多彩。限られた頭数の中で出走権を得た馬たちだけに、どの馬も争覇圏内にいると言ってよく、どう転ぶのか、予断は許されない。
まずはデータを見てみよう。馬単が導入されてからの過去19年間、その馬単での万馬券は4回(馬連は2回)。この間、1、2番人気馬によるワンツー決着は7回もある。昨年も一昨年も2番人気⇒1番人気で決着しているように、近4年は比較的順調に収まっているのだ。
なので今年も──とみる向きもあるだろうが、顔ぶれからしてそうならないのではないか。混戦模様の桜決戦だけに波乱の目は大いにあり。そうニラんで期待を寄せたいのは、ラズベリームースだ。
3戦目で未勝利を脱出。続く前走のアネモネSで2着を確保して桜の出走権を得た1勝馬だけに、評価はイマイチだろう。
よって伏兵視されているのだが、軽くみるのは断固禁物である。というのも、前走のレースぶりからポテンシャルの高さが十分、見て取れたからだ。
最終コーナーを回ったあとの勝負どころで前の馬が壁になり、コース取りの変更を余儀なくされる場面があった。にもかかわらず、そこから巻き返して、勝ったクロスマジェスティにコンマ2秒差まで追ったもの。そう簡単にできる芸当ではなく、力は確かだ。
しかもこの時は5カ月ぶりの実戦。乗り込まれて悪い仕上がりではなかったものの、大幅な体重増での出走(前走比プラス16キロ)。余裕残しの状態だった。
なので今回は使われての良化、変わり身を大いに見込んでいいわけだ。
実際、この中間の稽古の動きはキビキビとして実にいい雰囲気で、1週前に行われた坂路での追い切りも軽快でリズミカル。文句なしだった。
林調教師をはじめ、厩舎スタッフが「体の使い方がよくなって、全体に柔らかみが出た。馬体も締まっており、パワーアップしていることは確か」と、口をそろえ、状態のよさを強調しているほどだ。
血統背景も悪くない。超一流とは決して言えないが、近親、一族にベッラレイア(オークス2着)、ジャパンCを勝ったゴールデンフェザント(アーリントンミリオンS)などの活躍馬がおり、頂点に立ってなんの不思議もない。
よほど馬場が悪くならないかぎり、狙い撃ちといきたい。