満票でMVPを獲得し、メジャーを席捲し続ける二刀流のスーパースターに対し、弱冠二十歳にして圧巻の完全試合を成し遂げたメジャー最注目の日本人投手。いざ、戦わば──。夢の対決をシミュレーションしたくなるではないか。
今季もリアル二刀流でメジャーを沸かすエンゼルス・大谷翔平(27)。打者としては、5月14日(日本時間15日)に米通算100本塁打を達成した。昨年は日本人初の本塁打王を寸前のところで逃しただけに「今年こそは」と期待がかかっている。
一方、日本のプロ野球界は“令和の怪物”の異名を持つ、ロッテの佐々木朗希(20)の話題で持ちきりだ。4月10日に行われたオリックス戦では、完全試合、そして日本新記録となる13者連続奪三振という偉業を達成。次の登板となった日本ハム戦でも、途中降板とはなったが、8回までパーフェクトという異次元の活躍を見せた。
すでに世界標準のスーパースター・大谷に対し、同郷・岩手県の先輩の背中を追う佐々木。そんな2人の直接対決がここに実現する──。
打者・大谷翔平と投手・佐々木朗希の5番勝負。早速、プレーボール!
まずは佐々木が挨拶代わりに、火の出るような自己最速164キロストレートを胸元に投げ込んだ。これには、メジャーで豪速球に慣れている大谷といえどもバットが空を切る。
初対戦の初球に「真っ向勝負の真っ直ぐを佐々木が投げてくるのは必然」と言うのは、日本球界屈指のスラッガー・松永浩美氏だ。
「自分の豪速球が通用するのかどうか、試してみたいというのがピッチャーの心情です。佐々木も当然、初球はストレートを選択するでしょう」
続いて2球目は、長打を警戒しながら、外角高めにまたしても直球。ファウルとなる。大谷も160キロ超えのスピードボールをバットに当てて、意地を見せた。
そして最後は伝家の宝刀・高速フォークで空振り三振。“遊び球”は一切不要で、初対戦初打席は圧巻の3球勝負で佐々木に軍配が上がった。
決め球となったフォークを絶賛するのは、プロ野球解説者のデーブこと大久保博元氏である。
「メジャーのピッチャーは近年、ヒジに負担がかかるということで、フォークよりチェンジアップを多用する傾向にあります。あれだけスピードがあって鋭く落ちるフォークを投げるピッチャーは現在のメジャーには見当たらない。いくら大谷といえども、佐々木のフォークを簡単には打てないでしょう。打者は見慣れていない、実際に体感していない投手のボールを打つことが難しい。結果的に5打席全て佐々木が圧勝ということも考えられます」
さらにマリーンズOBでもある、プロ野球解説者・内藤尚行氏は、対戦場所が佐々木のホームであり、完全試合を達成したZOZOマリンスタジアムであれば、“無双状態”になると予想する。
「オリックスの吉田正尚が悩んだように、フォークを狙って打ちにいっても同球場特有の風の影響で予想以上に球が落ちる。条件が揃えば佐々木が有利でしょう」
続く2打席目も、初球は渾身のストレート。キレイに外角低めに決まり、大谷は手が出ない。2球目もストレート。かろうじてバットに当ててファウルだ。カウントノーツーからの3球目はストレートが高めに外れてボール。佐々木の誘い球も大谷は冷静に見送った。しかし、4球目の高速フォークであえなく三振。これで1打席、2打席と連続三振となった。
大久保氏は、佐々木の“魔球”をこう分析する。
「佐々木のフォークは人間が投げることができる範疇を超えている。最初の対戦で大谷ですら、あのボールを見極めて打つというのは考えられません。打者は過去の映像で、どんな球が来るのか前もって準備しますが、それでも球を打つのは難しい。あのイチローでさえ、松坂大輔との初対戦では散々な結果(3打席連続三振)でした」