打撃陣はどうなのか。昨季、セ・リーグ打撃10傑に広島の選手は見当たらず、ようやく15位に丸佳浩(24)が登場した。迫氏が解説する。
「野村謙二郎監督(47)の頭には、レギュラーを固めて1年間戦おうという考えがありません。だから梵英心(33)など、3割を打っても規定打席に到達していない選手がいた。日替わりオーダーで、3安打しても翌日は休ませることも。廣瀬純(34)は昨年4月、15打席連続出塁の日本記録を作ったのに、直後から控えに回った。キラ(29)が好調時も4番を外して5番にしたり。この投手にはこの打者の相性がいいという感覚で、自分流を貫いたのです」
その結果が3位、CS進出だった。迫氏が続ける。
「昨年は(8月に)皮肉にも(スター候補の)堂林翔太(22)が離脱したあと快進撃が始まりました。彼に代わって木村昇吾(33)、小窪哲也(28)が活躍した。場合によっては控え選手のほうが力を持っているわけです。栗原健太(32)が(故障で)いないことでキラが出てきたり、何か変化が起きるとカープは力を発揮する。それはメンバーをあえて固定していないからです」
今年はこの野村流が猛威を振るう。さらに迫氏は核弾頭の2人を大絶賛。
「丸、菊池涼介(24)の1・2番コンビは12球団NO1ではないでしょうか。特に二塁手・菊池の伸びしろが大きい。三振を少なくして打率を上げたいので、練習から全部右打ちをやっている。(巨人の)井端のようないやらしい打者になりますよ。菊池は守備範囲も12球団一で、一塁ゴロも捕りにいくのですが、片足は(外野の)芝にかかっています。(528補殺のプロ野球記録を樹立し、ゴールデングラブ賞を受賞した)昨年の菊池の守備は50安打分に相当すると言われました」
さらに今年は、引退した前田智徳氏を超える「代打の神」候補がいるという。パワーヒッターの岩本貴裕(27)である。昨年は前田氏より代打本塁打を多く放ち、野村監督が高く評価している大砲なのだ。
リーグ随一の投手力、カープ伝統の緻密なスピード野球、そして打撃陣も充実。古葉氏は感慨深い様子でこう言った。
「75年、シーズン途中で監督に就任してリーグ優勝した時はパレードをやった。だけどそのあとの79年、80年、84年の日本一は、経費がかかるからという理由でやってないんです。こんな悲しいことはない。私は昨年12月のOB会で話したんですよ。『日本一になってパレードをすることになったら、79年、80年、84年の日本一に貢献した選手を呼んで、パレードの車に乗せてやれたらいいな』と。野村(監督)にも言ったかな。ぜひ優勝して、あの感動を味わわせてあげたい」
過去のパレードのように平和大通りの沿道に数十万人のカープファンがひしめく姿が脳裏に浮かぶ──。