免震ビルは、基礎と躯体(上部構造)の間に積層ゴムアイソレーターなどの免震装置が設置されている建物である。
このような免震構造物は地震が起きた時、基礎の上に設置されている免震ゴムが揺れを吸収することによって、躯体の揺れを5分の1~3分の1程度に減殺できるとされている。そのため、免震ビルは地震に最も強い建物と考えられてきた。
ところが、この連載コラムで過去4回にわたって指摘した高層建築物と同様、免震ビルといえども地震によって倒壊する危険性のあることが、近年の研究で明らかになってきたのだ。
免震構造に詳しい建築工学の専門家が指摘する。
「問題とされているのは、免震ビルの上部構造の強度、すなわち躯体部分の強度です。一般にはほとんど知られていないことですが、免震構造物の場合、免震ゴムなどが地震の揺れを吸収することを前提として、法令上、建物の躯体部分は強度を下げて設計できるとされており、躯体そのものの耐震性は非常に脆弱なのです。ズバリ、その耐震性は『旧耐震基準並み』か『それ以下』と言っていいでしょう」
つまり、免震ビルの躯体そのものは旧耐震基準並みとしても、震度5強の揺れまでにしか耐えられない、ということになるのだ。建築工学の専門家が続ける。
「もちろん、免震装置がきちんと機能すれば、免震ビルが倒れることはありません。ところが、肝心要のその免震装置にも思わぬ盲点があったのです。都の防災会議は完全無視を決め込んでいますが、その盲点を突かれた場合、免震ビルはあっけなく倒れます」
次回は免震ビルを倒壊させる、恐怖の盲点とリスクに迫りたい。
(森省歩)
ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1961年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。出版社勤務後、1992年に独立。月刊誌や週刊誌を中心に政治、経済、社会など幅広いテーマで記事を発表しているが、2012年の大腸ガン手術後は、医療記事も精力的に手がけている。著書は「田中角栄に消えた闇ガネ」(講談社)、「鳩山由紀夫と鳩山家四代」(中公新書ラクレ)、「ドキュメント自殺」(KKベストセラーズ)など。