社会

東京都「首都直下地震等被害想定」の大ウソを暴く(11)「自力脱出困難者」は全員、見殺しにされる!「本当の現実」を隠蔽するアキレた言い訳

 今回の新被害想定には、倒壊した住宅やビルなどに取り残されることになる「自力脱出困難者」について、次のように書かれている。

「自立脱出困難者数が最大となるのは都心南部直下地震(冬・早朝)で、35049人(区部32733人、多摩2315人)と想定される」

 だが、都の防災会議の内情に詳しい元都市整備局幹部は、

「まさに新被害想定のお手盛りぶり、デタラメぶりを象徴する一文だ」

 と吐き捨て、次のように指摘するのだ。

「都心南部直下地震では区部のおよそ6割が震度6強以上の揺れに襲われるとされています。この場合、防災会議が多数の自力脱出困難者の発生を見込んでいる木密地域(木造住宅密集地域)だけを考えても、木造住宅の倒壊、同時多発的な火災の発生と延焼、細路まで含めた道路の寸断などによって、事実上、自力脱出困難者を救出することは不可能と言っていいでしょう。要するに『自力脱出困難者は基本的に、見殺しにされる』ということです。そのように見殺しにされる自立脱出困難者数を35049人と想定しておきながら、防災会議が弾き出した都心南部直下地震での最大総死者数は、わずか6148人とは…」

 しかも今回、防災会議が弾き出した最大自力脱出困難者数そのものにも、大きな疑問があるというのだ。元都市整備局幹部が続ける。

「首都・東京は1500万人超の昼間人口を抱える超過密都市です。加えて都内には、現行の耐震基準を満たさない事務所ビルや雑居ビルなどが無数に存在している。震度6強以上の揺れに襲われた場合、これらの旧耐震ビルもまた、ことごとく倒壊しますから、見殺しにされる自力脱出困難者の数はさらに膨れ上がるでしょう。当然、専門家集団である防災会議も以上のような『ウラ想定』をしているはずです。それを『定量化できない』などと言い訳してオモテに出さないようでは、被害想定を策定する意味がありません」

「最悪のケースを想定せよ」との危機管理の要諦はどこへ消えてしまったのか。

(森省歩)

ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1961年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。出版社勤務後、1992年に独立。月刊誌や週刊誌を中心に政治、経済、社会など幅広いテーマで記事を発表しているが、2012年の大腸ガン手術後は、医療記事も精力的に手がけている。著書は「田中角栄に消えた闇ガネ」(講談社)、「鳩山由紀夫と鳩山家四代」(中公新書ラクレ)、「ドキュメント自殺」(KKベストセラーズ)など。

カテゴリー: 社会   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「門脇誠より劣る」泉口友汰を起用の巨人・阿部監督に宮本慎也が「異議あり!」直言
2
一糸まとわぬ姿で待つ指原莉乃!浮気男との別れに言及も「蛙化現象」の疑いが浮上
3
中日・門倉健コーチ「謎だらけの失踪劇」で語られたYouTubeでの釈明/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
4
勝手に中日へ出ていった中田翔が「大不振2軍落ち」で「巨人がひと安心」の内情
5
【小湊鐡道が大ピンチ】バスに続いて鉄道も減便!地方ローカル線を襲う「乗務員不足」の深刻現場