イギリスのジョンソン首相の後任を決める与党保守党の党首選は、トラス外相が有利だという。トラス氏で決定となれば、イギリスではサッチャー、メイ両元首相に続く3人目の女性首相として大きな話題となりそうだが、日本に目を向ければ、今回の岸田改造内閣で19閣僚中、女性は経済安全保障担当相の高市早苗氏、文部科学相の永岡桂子氏の2人のみという寂しい状況だ。
それにしても「国内初の女性首相候補」とも言われた女性議員が今回、高市氏を除き党要職や閣僚からほとんど姿を消したのはなぜか。しかも、知名度ゼロと言っても過言ではない永岡氏が突然、文科相抜擢の背景には何があるのか。霞が関関係者が言う。
「少子化担当相でもあった野田聖子氏は本来であれば続投で、しかも発足間近の『こども家庭庁』の初代長官と目されていました。しかし野田氏の夫が『週刊文春』により過去に暴力団員だったと報じられ、名誉棄損を巡り文藝春秋との間で訴訟沙汰に。これで与党内では、野田氏には今回はお休みいただくという判断が下されたとも言われています」
また今回、小渕優子元経産相も入閣が叶わなかった。小渕シンパ議員がこう嘆く。
「14年に明るみに出た政治資金規正法違反事件の呪縛から逃れられていない。小渕氏が当時、沈黙し十分な説明責任を果たせなかったことが尾を引いているんです。また、同じ派閥の茂木敏充幹事長と反目しているのも大きい。このまま埋没してしまう可能性さえありますよ」
安倍元首相に可愛がられ、将来の女性首相候補の筆頭とも言われていた稲田朋美氏。彼女も16年に防衛相に抜擢されたが、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の自衛隊日報隠ぺい問題などで辞任に追い込まれ、以来鳴かず飛ばず。
そんな中、今回文科相に急浮上したのが永岡氏だ。自民党関係者が語る。
「永岡? 誰? ですよね(笑)。全国的な知名度がないにもかかわらず大抜擢されたのは、安倍氏不在の混乱の中で岸田内閣のキングメーカーとなった、麻生太郎副総裁の差し金と言われています。永岡氏は麻生派で当選6回。05年当時、衆院議員だった夫の洋治氏が自死後、弔い合戦で当選してきた主婦上がりの議員で、過去5回の衆院選では立憲民主党の中村喜四郎氏に敗北し続け、比例で当選を重ねてきた。しかし昨秋の衆院選で公明党が反中村となり、選挙区で初めて永岡氏が勝利。この勢いが岸田内閣の大勝に弾みをつけたんです。今回の抜擢は、その論功行賞とも言えます」
一方で将来の首相を有望視されていた女性議員が次々に消された内閣改造。日本で女性政治家がいまひとつ足踏み状態なのは、日本政治の構造的問題か、それとも人材不足なのか。
(田村建光)