9月21日にロシア全土で始まった、プーチン大統領による部分的動員令への反抗が、激しい広がりを見せている。24日にはモスクワやサンクトペテルブルクなど、各地で抗議デモが相次ぎ、人権団体OVDインフォによれば、21日の拘束者は38都市で1400人以上。24日のデモでも計34都市で820人が拘束されたとされ、これが事実なら、ここ数日で2000人以上が弾圧されたことになる。
徴兵を逃れるため、既に約26万人がロシアから出国したとも伝えられる中、ロシア独立系ニュースサイト「メドゥーザ」は「ロシア政府はこれ以上の人員流出を阻止すべく、28日にも動員対象になる男性の出国を禁止する条例を発動する可能性がある」と報じた。ロシア事情に詳しいジャーナリストによれば、
「タス通信は26日、『住民投票』の投票率が全4州で50%を突破し、投票が『成立した』と伝えている。これで30日にはプーチンが議会で演説し、4州の併合を宣言することが確実になった。プーチンとしては、どんどん召集令状を出して兵士を戦地に送り込むだけですが、反戦デモなど目障りでしかない。戦争反対の勢いが収まる気配は感じられませんから、今後も各地で拘束・逮捕者が続出することは間違いない」
実はロシアでは今年3月、国内で広がる反戦デモの呼びかけや、参加を抑え込む狙いから、違反すると最大15年の禁錮刑を科すという「軍に関する虚偽情報を広める行為」の規定を新設している。国際部記者が解説する。
「この法案はロシア人だけでなく全住民が対象で、ロシア国内で活動する外国メディアもその中に含まれます。ただ、3月や4月の時点では、政府によるメディア統制はまだ保たれていたため、政府にマイナスな報道は排除可能だった。ところが独立系メディアが急増した今、政府にとって都合の悪い情報がどんどん流れるようになり、市民がそれらを自由に耳にすることができるようになった。そのため、今後はこの強引な法案にモノを言わせることになるでしょう」
一方で、この法案にはウラがあり、反戦デモの逮捕者が連れていかれるのは刑務所ではなく、戦場の最前線──そんな独立系メディアの報道もあるのだ。
「政府にとって予備兵になりうる男性は大事でも、反戦デモに加わるような輩は害でしかない。だから『弾除け』として戦地に送り込むというんですが、これが事実なら『盾』として粛清されるということ。まさに狂気の沙汰としか言いようがありません」(前出・ジャーナリスト)
さらになんと、ロシア軍が占領している東部ルハンスク州の一部では、18歳以上のウクライナ人男性に対し、ロシア軍への参加を求める招集令状の配布を始めたと、ウクライナ軍参謀本部が発表したのだ。むろん、占領地での住民の徴兵は、完全なる国際条約違反だ。
予備兵という名のもと、受刑者をはじめ、軍隊経験皆無な学生、反戦デモ参加者、そして占領地のウクライナ人にまで兵員補充の手を伸ばす。完全に常軌を逸したプーチン断末魔の行方は…。
(灯倫太郎)