日本人には少ないとされていた「逆流性食道炎」の患者数が近年、大幅に増えているという。成人の1~2割が患っていると考えられており、特に中高年に多く見られる。
「逆流性食道炎」は胃酸が逆流してしまう病気。健康な人でも胃酸が逆流すること自体はあるので、短い時間の場合は問題はない。しかし、逆流時間が続く場合には、食道の粘膜が胃酸に荒らされて食道に炎症を起こす。
逆流は、胃酸の逆流を防ぐ機能が低下することで発症する。胃と食道の間には、胃酸の逆流を防ぐための下部食道括約筋があるが、加齢や、食事、姿勢、肥満などが原因となる。
要因の中でも特に問題視されているのが食の欧米化だ。肉類や脂肪分が多い欧米の食事は胃酸の分泌が多くなりやすいのだ。そのため胃酸の逆流を起こしやすく、逆流性食道炎を誘発しやすいと考えられている。
他にも、食べすぎや早食い、脂っこいものや炭酸飲料、アルコールの過剰摂取が挙げられる。肥満や喫煙習慣がある人は特に気をつけたい。
食べてすぐ横になったり、長時間前屈みの姿勢を取ること、胃を長時間圧迫するような肌着の着用も逆流性食道炎の要因となるので注意が必要だ。治療は、胃酸を抑える薬を内服するほか、症状が改善しない場合には、胃の運動を改善する薬や酸を中和する薬を併用することもある。
「逆流性食道炎」は生活習慣の見直しがポイントとなる。まずは、前述したように、原因となる食べすぎ、早食いを避けること。脂っこい食べ物やアルコールだけでなく、コーヒーや香辛料、酸っぱいものも胃酸の分泌を増やす可能性があるので、摂りすぎないよう注意したい。食後2~3時間は横にならないようにすることもポイントだ。体の左側を下にして横向きで寝るほうが望ましいと考えられているので、これも取り入れたい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。