阪神・藤浪晋太郎のメジャーリーグ、アスレチックス入りのニュースに阪神の現場、フロント関係者がそろって胸をなでおろしている。ポスティング移籍が不調に終わって出戻った場合、その存在が火種になりかねなかったからだ。
在阪スポーツ紙ベテラン記者が解説する。
「元々、岡田彰布監督は、先発にこだわり続けた上、メンタル面もあまり強くない藤浪を評価していない。さらに今の阪神は湯浅を始め、中継ぎ陣や、抑えが充実しており、そこに割って入るのは難しい。仮に今季、チームに残留したとしても、居場所はなかったのでは。場合によっては、トレード要員になっていたかもしれない」
なんとも微妙な立場に追い込まれていたのである。
昨季までのように戦力にならないと判断されれば、2軍で飼い殺すという手段も考えられる。だが、岡田監督は矢野燿大前監督に比べ、指導は数倍厳しく、言葉も痛烈だ。岡田監督の現役時代を知らない若手選手の間では「単なる厳しいおっさん。今後、ついていけるのか」という声も出始めているほど。藤浪の態度によっては、監督の怒りが爆発する可能性があった。
ある意味、厄介払いができ、球団は移籍金も手に入れることができるポスティングは渡りに船だったろう。藤浪とアスレチックスの契約は1年だが、阪神を離れた以上、メジャーで失敗しても再びチームに戻す必要はない。
藤浪がメジャーで成功しても、阪神にはメリットがある。シーズン終了後にはFA権を取得することになっており、活躍すればアスレチックスを含めた全30球団と長期契約を結ぶことも夢ではない。その上で藤浪は「最後に日本でやるには阪神」と話しており、メジャーでのキャリアを終えて古巣・広島に復帰した黒田博樹氏のようになるケースも考えられる。これならば、若手にその経験を注入できる上、営業的なメリットも計り知れない。
ただ、メジャーリーグの場合、契約に合意しても、メディカルチェックの結果でひっくり返ることがある。阪神は、どんでん返しなどないようにと、球団総出で願っていることだろう。
(阿部勝彦)