ソフトバンクとの頂上決戦で迎えた今年の日本シリーズ。「あの采配は大したもの。これぞオレ流か」と巨人の渡辺恒雄会長も絶賛した中日・落合博満監督の采配はここでも健在だ。しかしシーズン終盤で、解任を発表した球団に対しては沈黙を守る一方、強烈な「最後ッ屁」をかまそうとしているのだ──。
「落合監督が不気味だ」
今シーズン終盤から球界関係者の間でささやかれている言葉だ。いわく、「すっかりいい人になってしまった」(球団関係者)という声がもっぱらである。
そんな、落合監督の「いい人ぶり」を象徴したのが、日本シリーズ進出を決めた今月5日のヤクルト戦後だった。落合監督は珍しく饒舌に語った。
「私はただ黙って見守っているだけでよかった。このチームは誰一人欠けても勝てなかった。いい選手に恵まれ、すばらしいファンに囲まれた。選手は確実に成長しています」
監督人事に限らず、辞めると決まったとたんに〝いい人〟と報じられるのは世の常。しかし、落合監督の球団に対する怒りは、リーグ優勝直後に複数のスポーツ紙に発表された手記でも明らかだった。
「解任の通告を受けたのが、午後1時。発表されたのが午後3時。午後4時には号外が出ていたのだから、何とも手回しがいいことだ。(中略)巨人戦で負けた時にガッツポーズをしている球団職員がいる」
さらには、その役員に対しては、優勝した時には前を通り過ぎながら、握手をしなかったことまで暴露したのである。
この手記の波紋は大きく、球団には脅迫電話が殺到したという。
「それで中日の幹部が球団職員の名前を報じたスポーツ紙に『謝罪文を出してくれないか』と〝嘆願〟して事態の収束を図った」(中日関係者)
球団は今季限りで契約が切れる落合監督に対して、再契約をしない方針で虎視眈々と準備をしていたわけだが、それに対しての落合監督の「最後ッ屁」が、手記であり、握手拒否になって表れたのだ。
それだけではない。日本シリーズが終了する直後の今月23日には〝暴露本〟も出版するという。
「タイトルは『采配』(ダイヤモンド社)で、落合監督の10年ぶりの書き下ろしです。『常勝チームを作り上げるまでの采配や教育』について描いている。もともと、監督の解任が決定してから、出版が決まっただけに、解任劇の真相も盛り込まれるはずです」(プロ野球担当記者)
だが、「電撃解任」を巡って、球団と落合監督の激しいつばぜり合いは、水面下で繰り広げられていた。
「落合監督の電撃解任は9月22日、ヤクルトとの首位争いの真っただ中、発表された。当初、白井オーナーは、『4連戦が終わってから発表すればいい』と言ったが、球団幹部の強い押しに寄り切られてしまったのです。いわば、球団内に落合監督擁護派は白井オーナーだけだった」(スポーツ紙デスク)
さらに追い打ちをかけるように、最後のヤクルトとの4連戦を前にした10月10日、11人の腹心コーチと来季の契約を結ばないことが発表されたのである。
まるで、嫌がらせのように首位を争うヤクルト戦の前になると、決まってチーム内で“何か”が起きる状態が続いていたのだ。