栗山英樹監督の采配が随所に光った、侍ジャパンの14年ぶり世界一。2013年大会で優勝したドミニカ共和国以来、大会史上2度目となる全勝での優勝だった。
そもそも栗山監督が誕生する背景には、読売グループの「見えない後押し」があった。監督選考は侍ジャパンの強化委員会が行い、日本野球機構(NPB)の井原敦事務局長が強化委員長を担ったが、
「NPBには読売新聞のOBが多くいます。井原委員長は読売新聞時代に、運動部長も務めています」(WBC担当記者)
歴代のWBC監督を見ても「読売色」は一目瞭然だ。第1回大会の王貞治監督(現ソフトバンク会長)を筆頭に、どっぷり浸かっている。第3回大会の山本浩二監督は、現役時代は「ミスター赤ヘル」だったが、引退後は日本テレビで野球解説者を長年務めた。第4回大会の小久保裕紀監督も、ソフトバンクから巨人へ無償トレードで移籍した経緯がある。
今回のWBCでも、東京ラウンドでは読売新聞が主催スポンサーだったが、そんな中で栗山監督は、初めて巨人の色に染まっていない指揮官だった。日本での野球人気が怪しくなってきた状況で、集客と収益が全てにおいて優先された。
「そこで大リーガー招集のハードルが低くなった今大会、大谷翔平と公私ともに信頼関係がある栗山監督が一本釣りされたわけです」(前出・WBC担当記者)
世界一になった栗山監督には間違いなく、さらなるオファーが殺到する。侍ジャパン監督としての契約は今大会で切れ、フリーの立場だ。
一方で栗山監督は自ら「原マニア」というほど巨人・原辰徳監督に心酔していることは、球界関係者なら知らない者はいない。
「巨人は伝統的に、元4番か元エースだったスター性のある生え抜きОBが監督の座に就く、という不文律のようなものがあります。あるいは他球団で監督を経験した者も省かれる。連続V逸、Bクラス転落と危機的状況に置かれた巨人で、そうした伝統にとらわれている場合ではないとの考えが浮上すれば、原政権の成績によっては来季、栗山監督が読売巨人軍のユニフォームを着ている可能性も出てくる」(スポーツ紙デスク)
なにしろ「ゆくゆくは初の選手出身コミッショナーに」との声もあるほど。どんな「掟破り」があっても不思議ではないのだ。
(小田龍司)