今季もヤクルトスワローズが好調だ。球団新記録となる開幕5連勝を達成し、開幕ダッシュを難なく成し遂げた。
指揮を執る高津臣吾監督は2020年にヤクルト第22代監督に就任し、初年度は最下位に沈んだが、21年は日本一、昨年はリーグ連覇を果たし、今季は球団史上初となるリーグ3連覇を目指す。高津監督自身、「僕の野球は『野村野球』です。それこそゼロから野球人として育てていただいた」と、恩師である野村克也氏が達成できなかった大記録に挑戦するシーズンでもある。
ヤクルトの強さの秘訣は、監督が決して「怒鳴らない」ことだ。本人は「今の子(選手)たちは、怒ったら必ずふてくされる。怒っているのを悟られないようにしている」と話し、野村監督からも「怒鳴りつけられたことは記憶にない」という。
「監督が怒鳴らないチーム」といえば昨年末、サッカーW杯カタール大会でベスト16の快進撃を果たした日本代表・森保一監督、そしてWBCで世界一を奪還した栗山英樹監督が挙げられる。
森保監督が「選手をいかに気持ち良くピッチに送り出すかを常に考えている」と言えば、栗山監督は「WBCでは選手を100%信頼して送り出した」。国際大会で見せた神采配の肝は「選手ファースト」で共通している。
彼ら3人は現在に至るまで、決してスター街道を歩んできたわけではなかった。高津監督は日本、アメリカ、韓国、台湾のプロ野球を渡り歩き、森保監督はママさんサッカーを指揮したことがある。栗山監督の現役生活は7年間という短さだ。12年にいきなり日本ハムの監督に就任するまでは大学教授を務めたり、少年野球の普及活動に力を注いでいた。
三者の生き方には、組織を動かす多くの「核心」が隠されているのだ。
(小田龍司)