陸上自衛隊の多用途ヘリが沖縄県の宮古島周辺で消息を絶ったのは、4月6日のことである。ヘリには陸上自衛隊第8師団長をはじめ、同師団に所属する幹部ら10名が搭乗しており、墜落したとみられる現場海域では、今も懸命の捜索活動が続けられている。
墜落原因も含めて情報が錯綜する中、翌7日に行われた閣議後の記者会見では「行方不明となっている10人の捜索に全力を尽くす」と切り出した浜田靖一防衛相が「搭乗していた第8師団長、坂本(雄一)陸将らは、現在まで発見に至っていない」との現況報告の際、声を震わせながら言葉に詰まって涙ぐむ一幕もあった。
だが、事故発生からの時間の経過とともに10名の生存確率は低下していくため、捜索現場には絶望的な空気が漂い始めている。
さらに、そこに追い討ちをかけるような懸念も浮上した。現場海域の生態系に詳しい海洋生物学の専門家が言う。
「陸自ヘリが墜落したとみられる海域は、ホオジロザメやオオメジロザメ、イタチザメなどの人を襲うサメ、いわゆる『人食いザメ』が泳ぎ回っている海なのです。これまでも数多くの痛ましい人的被害が報告されており、生存している状態でヘリから海上に脱出できたとしても、今度は人食いザメに襲われる危険にさらされることになります」
しかも人食いザメは遊泳者やダイバー、素潜り漁をしている漁師らを襲うだけではなく、海上や海中を漂う遺体にも猛アタックをかけてくるという。
「したがって、行方不明者の遺体が発見されない可能性は極めて高く、仮に発見されたとしても、身元を特定できない可能性もまた極めて高い、というのが、専門家として言える真実なのです」
まさに「悲劇の二重奏」とでも呼ぶべき状況だが、この専門家はまた、
「この際、海中で捜索を行う隊員が人食いザメに襲われるという『2次被害』についても、十分に注意していただきたい」
と呼びかけている。