北郷 もともと、「浅草フランス座」で殿がエレベーターボーイをやってた頃、きよし師匠はすでに舞台に立っていたんですよね。
きよし そうそう。(たけしの師匠の)深見千三郎師匠と2人でコントやってたんですよ。
北郷 途中から殿が入ってきて──。
きよし そうそう。ただね、入ってきて舞台に出したら、師匠のネタを全部変えてくるのよ、アイツ。
北郷 入ったばっかから、そんな感じだったんですか(笑)。
きよし でも、おもしろいんだよ。相方は師匠までネタにしちゃう。
北郷 へえ~。
きよし 師匠は事故で左手の指を4本失ってたんだけど、それで「師匠なんか、水泳できねえだろ」って。うちの相方とそっくりなタイプの師匠が「うるせえ、バカヤロー! 水泳ぐらい得意なんだよ」なんて返すと、「師匠、平泳ぎすると曲がってっちゃうんでしょう?」って(笑)。
北郷 ハハハハ、「師匠は水泳、タッチの差で負けた」とかも言ってますよね(笑)。
きよし 深見師匠って、俺らが「ロック座」でやっていた時代から座長だったから、おそれおおかったの。それをネタにしちゃうんだから、スゲェやつだと思ったよ。
北郷 入ってきたばかりのエレベーターボーイが(笑)。
きよし ところが深見師匠は、それがうれしかったみたいだね。相当かわいがっていた。
──そんな出会いをされた、おふたりがツービートを結成するんですね。ちなみにコンビ名の由来は?
きよし 2人でコンビになるのに、「名前、何にしようか?」って喫茶店で2~3時間話してて、もう疲れちゃってさ。「丸井」とか「三菱」とか、いろんな名前が出たんだけど、「それはまずいんじゃない」なんて言いながら。
北郷 ハハハ、「リズム・フレンド」なんて候補もあったとか聞きましたけどね。
きよし それで、うちの相方がジャズ喫茶でアルバイトやってたって話から、「リズムにさ、2ビート、4ビート、8ビート、16ビートってのがあるんだよ」って話がポコッと出た時に、「あれ、ツービートっていいんじゃない。ツービートでやろうよ」って言ったんだよ。
北郷 いい響きですよね。じゃあ、きよし師匠が最初におっしゃったんですね。
きよし 相方も「いいか、これで」って。うちの相方もいろいろ考えるわりに必ず最後は「いいや」ってなるから(笑)。
◆プロフィール ビートきよし(64)72年、相方・ビートたけしと「ツービート」を結成。空前の漫才ブームを牽引した。長らくコンビでの活動を縮小していたが、今年4月に「オフィス北野」入りを果たしたため、完全復活も期待されている。
◆プロフィール アル北郷(42)95年、殿に弟子入り。97年より7年間、付き人を務めた。現在は「新・情報7days ニュースキャスター」(TBS系)等でブレーンとして活躍。単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」(徳間書店刊)も好評発売中。