3歳牝馬クラシックの1冠目にあたる桜花賞(阪神・芝1600メートル)を驚異の後方一気で制したリバティアイランド。だが、JRA(日本中央競馬会)がYouTubeの公式チャンネルで配信を開始したジョッキーカメラの動画には、鞍上の川田将雅がゴール直後に漏らした「ハラハラドキドキのホンネ」が、安堵の声とともに克明に収録されていた。
動画は騎手のヘルメットに装着された小型カメラによって録画されたもので、手綱を握る騎手の目線からの迫力あるレース映像のほか、ゴールイン後に騎手が口にした生々しい肉声などを視聴することができる。
僅差で勝利を手にした川田は、ゴール板を過ぎると「ハイ、お嬢さん、終わりです」とリバティにねぎらいの言葉をかけるや、2着馬のコナコーストに騎乗していた鮫島克駿の近くに馬を寄せ、こうレースを振り返ってみせた。
「2着に来た?(頷きながら)いや~、オマエに勝たれるかと思ったわ。いい走りやったな、それ(コナコーストのこと)。あら~、ちょっと伸びてるね、と思ってさ」
その後、川田は「よくやりました」と再びリバティに声をかけると、祝福の言葉を述べる騎手らに「ありがとう」を返しつつ、意外な事実を吐露したのである。
「今日は全然、進まんかったわ。全然、進まん」
さらにスタンド前に戻ってきた時も、馬上から厩舎関係者らに「勝ったよ~」「(これで)解放されるね」などと挨拶を述べた後、
「全然、進まんかった。何してんねん、と言いたいくらい」
と、先ほどの内情をまたもや連発。これには厩舎関係者も、率直な同情を示す。
「ゲートを出た時から、進まなかったもんなぁ」
川田とも厩舎関係者とも親しいホースマンが、核心に迫る。
「このホンネこそ、陣営がリバティアイランドの底知れぬ能力を認めた証拠にほかなりません。この日のリバティの行きっぷりは、確かに悪かった。それでも絶望的な後方の位置から差し切った鬼脚を目の当たりにして、川田らは『怪物牝馬』たる揺るぎない確信を得たのだと思います。オークスか日本ダービーか。陣営は次走の選択に迷っているようですが、2400メートルへの距離延長は、追走がラクになる分、行きっぷりの悪さは、むしろ武器になる」
まさに、生々しい肉声からしか知りえない、マル秘の舞台裏だったのである。