年明け早々に行われる箱根駅伝の名将として知られる、青山学院大学陸上競技部・原晋監督の「投資失敗」がマスコミを賑わせている。
原監督が購入、保有していたのは、世界有数の金融機関として名高いクレディ・スイスの債券。ところが、今年3月の米最大手シリコンバレーバンクの経営破綻に端を発した金融不安の煽りを受け、スイスに拠点を置くクレディ・スイスも経営破綻の危機に陥ることに。同じスイスにある多国籍投資銀行のUBSグループに買収されたあげく、クレディ社が発行していた2兆円以上もの債券が無価値と化してしまったのだ。
原監督はテレビをはじめとするマスコミの取材に「保有していた債券が紙切れ、ゼロになってしまった」「紙切れになるという話は聞いていなかった」「損失金額は日本のサラリーマンの年収のウン倍」「老後の資金として運用していたのに」などと不満を大爆発させているが、原監督を見舞った投資失敗は「対岸の火事」などではないという。
債券投資をはじめとする資産運用に詳しい投資アナリストが解説する。
「原監督が購入、保有していたのは、AT1債と呼ばれている証券です。AT1債は株式と債券の中間に位置する有価証券で、発行元の金融機関が破綻した場合、普通債などに比べて弁済順位が極めて低い、ハイリスク・ハイリターンの債券なのです」
その上で、原監督が営業マンからハイリスク・ハイリターンの説明がなかったとする非難を展開していることに、
「そもそも『紙切れになるかもしれません』などと言って購入を勧める営業マンなどいません。投資はすべからく自己責任の世界であり、原監督のケースは他人事ではないのです。今後、アメリカ発の金融不安はさらに拡大する可能性もありますから、この際、自分が保有している金融商品を再チェックしておくべきでしょう」
この世の中、「そんなにうまい話などない」ということだ。