ついに、「大阪秋の陣」の火蓋が切って落とされた。〝ナニワの独裁者〟は常に敵を作り続ける。ついには政界だけでなく財界、芸能界を巻き込んで、大阪は〝真っ二つ〟に分断された──。そんな複雑怪奇な人間関係を本誌が〝まるハダカ〟にする!
いよいよ橋下徹氏と平松邦夫氏とのバトルが、選挙戦という形で本格化した。
かたや、元タレント弁護士、一方は毎日放送の元アナウンサー。両人ともに芸能界とは浅からぬ関係にあるだけに、芸能人たちがどちら側につくのかは注目だ。
さらに、政治評論家の本澤二郎氏がこう話す。
「大阪は全国でも投票率が低い地域です。しかし、亡くなった横山ノックが府知事選で100万票以上、獲得したことからもわかるとおり、芸能人の応援が浮動票の行方を大きく左右する地域でもあるのです」
その定説どおりに、「反橋下派」が先に仕掛けた。
11月8日、平松氏の決起集会に俳優の杉良太郎が現れ、こう言い放ったのだ。「人気のために心地よい言葉を吐いて、扇動するようなことはダメ」
一時は、市長選出馬すら考えたという杉である。〝ナニワの独裁者〟と称される橋下氏に先制パンチを食らわした格好だ。
また、この決起集会には府知事選に立候補した倉田薫氏も駆けつけ、「W勝利」を祈念した。
その倉田氏の背後にも上方演芸界の重鎮が控えている。人間国宝の桂米朝だ。
平松氏陣営によれば、米朝の長男に当たる桂米團治が倉田氏の出馬を説得したというのだ。その際、こんなセリフを使った。
「オヤジを車椅子に乗せてでも、文化を守る倉田さんを応援に行きます」
この「文化を守る」という言葉の背景には、09年の「ワッハ上方」(大阪府立上方演芸資料館)の移転騒動がある。当時、橋下氏は大阪府の財政再建策の一つとして、「ワッハ上方」を賃料の安い通天閣への移転を計画。これに対して、「ワッハ上方」の大家である吉本興業や芸人が反発したのだ。
「橋下氏は上方文化の破壊者だ」
と、芸人サイドがチクリとやると、こう反論したものだ。
「吉本興業はがめつい」
在阪の芸能記者が言う。「結果的に移転はしなかったが、その時のわだかまりが演芸界には残っておるんですわ。また、倉田氏が市長を務めていた池田市には『落語みゅーじあむ』という上方落語の資料館があって、上方落語協会会長の桂三枝が住んでおる。演芸界の多数が『反橋下派』に回ってる状況ですわ」